COLUMN医師監修コラム
豊胸後の生活Q&A|授乳・乳がん検診・運動はいつから可能なのか徹底解説
2026.01.09
「豊胸手術をしてみたいけれど、将来こどもが生まれた時に授乳はできるの?」「激しい運動や大好きな温泉にはいつから行けるようになるんだろう?」
理想のバストを手に入れたいと願う一方で、術後の生活にどのような制限がかかるのか、具体的なイメージが湧かずに不安を感じている方は非常に多いです。手術はゴールではなく、新しい自分との生活のスタート地点。だからこそ、ダウンタイムや長期的なリスクについて正しく理解しておくことが、後悔のない選択につながります。
これから、豊胸手術後の生活に関するよくある疑問をQ&A形式で、医学的な視点と実際のライフスタイルに寄り添いながら詳しく解説していきます。カウンセリングに行く前に知っておきたい「リアルな術後生活」のシミュレーションとして、ぜひ役立ててください。
目次
1. 豊胸手術後の授乳は可能ですか?
将来の妊娠や出産を考えている方にとって、「豊胸手術をすると母乳育児ができなくなるのではないか」という点は、最も大きな懸念材料の一つでしょう。結論から申し上げますと、ほとんどのケースにおいて、豊胸手術後でも問題なく授乳を行うことは可能です。
しかし、「絶対に影響がない」と言い切れるわけではなく、選択する術式やバッグの挿入位置によっては、母乳の出方や乳腺炎のリスクに若干の違いが生じることがあります。ここでは、術式ごとのメカニズムと、授乳期に気をつけるべきポイントを深掘りしていきましょう。
シリコンバッグ豊胸と乳腺の関係
シリコンバッグ豊胸の場合、バッグを挿入するスペースは主に「乳腺下」か「大胸筋下」のいずれかになります。どちらの方法であっても、母乳を作る組織である乳腺そのものを直接傷つけることは避けて手術が行われるのが一般的です。
- 乳腺下法の場合: 乳腺のすぐ裏側にバッグを配置します。乳腺組織自体には触れませんが、授乳期に乳腺が発達して張った際に、バッグによる圧迫感が強くなる可能性があります。
- 大胸筋下法の場合: 乳腺の下にある大胸筋のさらに下にバッグを入れます。乳腺とバッグの間に筋肉の層があるため、授乳機能への影響は最も少ないとされています。
ただし、切開部位には注意が必要です。「乳輪切開」を行う場合、どうしても乳腺組織の一部にメスを入れることになるため、乳管(母乳の通り道)が一部損傷する可能性があります。これが原因で母乳の出が悪くなるリスクはゼロではありません。将来的に授乳を強く希望される場合は、脇の下やアンダーバストからの切開を選択することをおすすめします。
脂肪注入豊胸における授乳リスク
ご自身の脂肪を胸に移植する「脂肪注入豊胸」は、異物を使わないため安心感が高いと思われがちですが、授乳に関しては特有の注意点があります。
注入された脂肪がすべて定着すれば問題ありませんが、一部が壊死して「しこり(石灰化)」になってしまうことがあります。このしこりが乳腺近くにあると、乳腺を圧迫して乳腺炎を引き起こしやすくしたり、授乳中の痛みの原因になったりすることがあるのです。
母乳にシリコンが溶け出すことはある?
「シリコンバッグが体内で破れて、母乳に成分が混ざることはありませんか?」という質問もよくいただきます。現在の医療用シリコンバッグは非常に耐久性が高く、万が一破損しても中身が漏れ出しにくい「コヒーシブシリコン」という形状記憶タイプのジェルが使われています。
また、バッグは体内で「被膜(カプセル)」という膜に覆われるため、成分が乳腺組織を通過して母乳に混入することは医学的に考えにくいです。実際に、豊胸手術を受けた母親の母乳と、そうでない母親の母乳を比較しても、シリコン濃度に差はないという研究結果も報告されています。過度な心配は不要ですが、定期的な検診でバッグの状態を確認しておくことは、安心のために不可欠です。
授乳に関するチェックリスト
- ● これから手術を受けるなら「脇の下」や「アンダーバスト」切開を選ぶ
- ● 脂肪注入の場合は、しこり(石灰化)がないか事前にエコーで確認しておく
- ● 助産師さんや産婦人科医には、念のため豊胸手術済みであることを伝えておく
2. 乳がん検診(マンモグラフィ・エコー)は受けられますか?
女性にとって欠かせない健康管理の一つである「乳がん検診」。豊胸手術を受けると、検診が受けられなくなったり、がんの発見が遅れたりするのではないかという不安は尽きません。この問題に関しては、「受けられる検査と受けにくい検査がある」こと、そして「申告義務がある」ことを正しく理解する必要があります。
マンモグラフィ検査の難しさとリスク
マンモグラフィは、乳房を板で挟んで薄く引き伸ばし、X線撮影を行う検査です。この「強く挟む」という工程が、豊胸手術後のバストにとっては大きなハードルとなります。
- バッグ破損のリスク: 強い圧力でプレスするため、万が一のバッグ破損の恐れがあります。そのため、多くの検診センターではシリコンバッグ挿入者のマンモグラフィを断っているのが現状です。
- 診断の精度低下: バッグが白く写り込んでしまい、その裏側にある乳腺組織が見えなくなる(死角ができる)ため、小さながんを見落とす可能性があります。
ただし、最近では「豊胸術後対応」を謳っているクリニックもあり、技術を持った検査技師であれば、バッグを後ろに押しやりながら乳腺だけを引き出して撮影する方法で対応してくれる場合もあります。それでも、一般的な自治体の集団検診などでは断られるケースがほとんどであることを覚えておきましょう。
エコー(超音波)検査の推奨
豊胸手術後の方に最も適しているのが、エコー(超音波)検査です。エコー検査は乳房の表面に器械をあてて内部を観察するため、バッグを圧迫破損させるリスクがありません。
また、エコー検査は「高濃度乳腺(デンスブレスト)」の方が多い日本人女性の乳がん発見に優れているという特徴もあります。シリコンバッグが入っていても、その手前にある乳腺の状態は比較的クリアに観察できるため、豊胸術後のメインの検診方法はエコーになると考えて良いでしょう。
必ず「豊胸済み」であることを申告する
「恥ずかしいから言いたくない」という気持ちは痛いほど分かりますが、検診を受ける際は必ず問診票で豊胸手術を受けていることを申告してください。
申告なしで検査を受けると、画像の「異常な影」が腫瘍なのか、脂肪注入後のしこりなのか、バッグの縁なのか判断がつかず、誤診(要精密検査)と判定されてしまうことが多々あります。また、知らずにマンモグラフィで圧迫され、バッグが破損する事故を防ぐためにも、医療者への情報共有は自分の身を守るために必須です。
3. うつ伏せで寝られるのはいつから?
日常生活で意外と困るのが「寝る時の体勢」です。うつ伏せ寝が癖になっている方や、マッサージ店でうつ伏せになる機会が多い方にとって、いつから胸を圧迫して良いのかは切実な問題です。
豊胸手術直後は、まだ組織が安定しておらず、傷口も治癒過程にあります。不用意な圧迫は仕上がりの形を崩したり、痛みを増強させたりする原因となるため、時期に応じた注意が必要です。
術後1ヶ月間は仰向け推奨
手術直後から少なくとも1ヶ月程度は、基本的に「仰向け」で寝ることを強く推奨します。
- バッグの位置固定: 術後すぐは、体内でバッグの周りに被膜(カプセル)が形成されておらず、バッグが動きやすい状態です。この時期にうつ伏せや横向きで寝ると、バッグが外側や上側にズレて固定されてしまう恐れがあります。
- 内出血と腫れの軽減: 心臓より高い位置を保つ必要はありませんが、圧迫を避けることで血流を妨げず、ダウンタイムの回復をスムーズにする効果があります。
- 脂肪注入の場合の定着率: 脂肪注入豊胸では、注入した脂肪細胞に血管が新生され、栄養が届くようになるまでの数週間が勝負です。この時期に圧迫して血流を阻害すると、脂肪の定着率(生着率)が著しく低下してしまいます。
うつ伏せが可能になる目安の時期
一般的な目安としては、術後3ヶ月を経過したあたりから、短時間のうつ伏せなら問題ないとされることが多いです。
シリコンバッグの場合、カプセル拘縮(被膜が硬くなる現象)を防ぐためのマッサージの一環として、医師から「うつ伏せになって胸を圧迫する練習」を指示されることもあります(※スムースタイプなどの場合。最近のテクスチャードタイプではマッサージ不要のケースも多いので、必ず主治医の指示に従ってください)。
完全に気兼ねなくうつ伏せで長時間寝られるようになるには、半年程度見ておくと安心です。違和感や痛みが残っているうちは、無理にうつ伏せをするのは避けましょう。体が「まだ早い」とサインを出している証拠です。
快適に寝るための工夫
仰向けで寝続けるのが辛い場合は、以下のような工夫を取り入れてみてください。
- 背中にクッションを挟む: 完全に真上を向くのではなく、背中の片側にクッションを挟んで少し体を傾けると、腰への負担が減り楽になります。ただし、胸が潰れない程度の角度にとどめましょう。
- 抱き枕の活用: 足に抱き枕を挟むだけでも、体勢が安定し、仰向けの苦痛が和らぎます。

4. 激しい運動や筋トレの再開時期
ボディメイクの一環としてジムに通っている方や、スポーツが趣味の方にとって、運動制限の期間はストレスが溜まるものです。「せっかくスタイルを良くしたのに、運動できずに太ってしまったら意味がない」と焦る気持ちもあるでしょう。
しかし、早期の激しい運動は、腫れの悪化や傷口の離開、さらにはバッグの変形など、取り返しのつかないトラブルを招く可能性があります。段階を踏んで徐々に体を慣らしていくことが大切です。
軽い運動(ウォーキングなど)はいつから?
血行を良くすることは回復を早めるためにもプラスになります。術後3日〜1週間程度経過し、痛みが落ち着いてくれば、散歩や軽いウォーキング程度の運動は再開しても構いません。
ただし、心拍数が急激に上がるような早歩きや、体が温まりすぎて汗ばむほどの運動は、術後2週間ほど避けたほうが無難です。血流が良くなりすぎると、治りかけの血管から再出血したり、腫れがぶり返したりする原因になります。
筋トレ・ランニングの再開スケジュール
胸が上下に大きく揺れるランニングや、大胸筋に強い負荷がかかる筋トレ(ベンチプレスや腕立て伏せなど)は、最も慎重になるべきカテゴリーです。
特に「大胸筋下法」で手術をした場合、大胸筋の下にバッグが入っているため、筋肉を収縮させるとバッグが強く圧迫され、変形や位置ズレの原因になります。大胸筋を使うトレーニングは、最低でも術後3ヶ月間は控える必要があります。
下半身中心のトレーニング(スクワットやレッグプレスなど)であれば、術後1ヶ月程度から徐々に再開可能です。ただし、重いウェイトを持つ際に無意識に上半身や胸に力が入ってしまうことがあるため、最初は軽めの負荷から様子を見ましょう。
揺れを抑えるスポーツブラの重要性
運動を再開する際は、揺れを強力にサポートするスポーツブラの着用が必須です。
豊胸後のバストは重量が増しているため、クーパー靭帯への負担も大きくなっています。揺れはバストの下垂を招くだけでなく、バッグと組織の摩擦を引き起こし、カプセル拘縮のリスクを高める要因にもなり得ます。「ハイサポート」と記載された、ランニング用などのしっかりしたホールド力のあるものを選びましょう。
5. 温泉やサウナ、プールはいつからOK?
リラックス効果の高い温泉やサウナ、そしてレジャーとしてのプール。これらも術後しばらくは我慢が必要な項目です。主な理由は「感染症のリスク」と「血流促進による腫れの悪化」の2点です。
入浴とシャワーの開始時期
一般的に、シャワーは術後3日目(ドレーン抜去後や圧迫固定が外れてから)から可能なクリニックが多いです。しかし、湯船に浸かる入浴は、抜糸が完了する術後1週間〜2週間後からが目安となります。
傷口が完全に塞がっていない状態で不特定多数の人が利用する公衆浴場や温泉に行くのは非常に危険です。雑菌が傷口から入り込み、感染症を引き起こすと、最悪の場合バッグを抜去しなければならなくなることもあります。自宅のお風呂であっても、一番風呂を利用するなど清潔さを保つ配慮が必要です。
サウナ・岩盤浴の注意点
「整う」ブームで人気のサウナですが、豊胸術後は特に注意が必要です。高温の環境は血管を一気に拡張させるため、術後1ヶ月未満の時期に行くと、落ち着きかけていた腫れや痛みが再発する(炎症の再燃)リスクが高まります。
また、シリコンバッグ自体は熱に強い素材で作られていますが、体内の温度が急上昇することは術後のデリケートな組織にとって負担となります。サウナや岩盤浴も、少なくとも術後1ヶ月は控え、腫れや内出血が完全に引いたことを確認してから再開しましょう。
6. 飛行機に乗っても大丈夫?気圧の変化とリスク
遠方への旅行や出張、あるいは海外での手術を検討されている方にとって、飛行機の利用可否は重要なスケジュール調整事項です。インターネット上では「気圧の変化でシリコンバッグが破裂する」といった衝撃的な噂を目にすることもありますが、果たして真相はどうなのでしょうか。
医学的な見解としては、現在の高品質なシリコンバッグが飛行中の気圧変化程度で破裂することはあり得ません。しかし、手術直後の搭乗には「破裂」とは異なる、もっと現実的な身体的リスクが潜んでいます。ここでは、フライトにおける注意点と推奨される待機期間について解説します。
「バッグ破裂」は都市伝説だが、「むくみ」は現実
現代の医療用シリコンバッグは、強烈な圧力をかけても耐えられるよう設計されており、航空機内の気圧調整下での膨張・収縮テストもクリアしています。したがって、バッグそのものが爆発するような事態は心配無用です。
しかし、気圧が下がると体内のガスや液体が膨張しようとする作用が働くため、術後の腫れやむくみが一時的に悪化する可能性は否定できません。
- 痛みや圧迫感の増強: 上空で気圧が下がると、手術部位の炎症組織が反応し、ジンジンとした痛みや強い張りを感じることがあります。
- 傷口への影響: 抜糸前の不安定な傷口の場合、内側からの圧力で縫合部に負担がかかるリスクがゼロではありません。
最も警戒すべきは「エコノミークラス症候群」
豊胸手術直後の飛行機移動で最も避けるべきリスクは、バッグの問題よりも「血栓症(エコノミークラス症候群)」です。
手術後は身体の防御反応として血液が固まりやすくなっています。その状態で狭い機内に長時間座り続け、水分不足や気圧低下が重なると、足の静脈に血栓(血の塊)ができやすくなります。もしこの血栓が肺や脳に飛べば、命に関わる重大な事故につながりかねません。特に全身麻酔を用いた手術の直後は、このリスクが高まっていることを自覚する必要があります。
国内線・国際線それぞれの搭乗目安
安全を最優先に考えるならば、以下のスケジュールを目安に計画を立ててください。
どうしても術後早期に飛行機に乗らなければならない場合は、事前に執刀医に相談し、弾性ストッキングの着用や水分摂取を徹底してください。「自分は大丈夫」という過信が、予期せぬトラブルを招きます。
7. 豊胸後のブラジャーの選び方
豊胸手術を終えた後、新しいサイズのブラジャーを選ぶのは楽しみの一つです。しかし、デザインだけで選んでしまうと、せっかく作ったバストの形(シェイプ)を崩したり、傷跡の治りを遅らせたりする原因になります。
術後のバストは時期によって状態が変化するため、その時々の「バストが必要としているサポート」に合わせて下着を使い分けることが、美しい仕上がりを維持する秘訣です。
【術後〜1ヶ月】ワイヤー入りは厳禁!
手術直後から1ヶ月間は、まだバッグや注入脂肪が定着しておらず、被膜(カプセル)が形成されている途中のデリケートな時期です。この期間に最も避けるべきなのは、アンダーバストを強く締め付ける「ワイヤー入りブラジャー」です。
- 傷口への摩擦: 多くの手術で切開を行うアンダーラインに硬いワイヤーが当たると、傷の治癒を妨げ、色素沈着や肥厚性瘢痕(ミミズ腫れのような傷)の原因になります。
- 位置ズレの誘発: 強い締め付けや補正機能によって、バッグが意図しない位置へ押し上げられたり、変形した状態で固定されたりするリスクがあります。
この期間は、クリニックから支給される「圧迫固定バンド」や、締め付けのない「カップ付きキャミソール」「医療用ブラ」で過ごすのが基本です。おしゃれよりも「固定と保護」を最優先してください。
【術後1ヶ月〜3ヶ月】ノンワイヤーで優しく支える
腫れが引き、傷口が塞がってきたら、少しずつ通常の下着に移行していきますが、いきなり補正下着をつけるのはNGです。まずはホールド力のあるノンワイヤーブラから始めましょう。
ユニクロのワイヤレスブラや、スポーツブランドのライトサポートブラなどが適しています。ただし、脂肪注入豊胸の場合は、脂肪を押し潰さないよう、カップにゆとりのあるサイズを選ぶか、さらに1ヶ月ほどカップ付きキャミソールで様子を見ることもあります。
【術後3ヶ月以降】ワイヤー入り解禁とサイズの測り直し
術後3ヶ月(個人差や経過によりますが)を経過し、医師から許可が出れば、いよいよワイヤー入りブラジャーの着用が可能になります。ここで重要なのが、必ずプロにサイズを計測してもらうことです。
「たぶんDカップくらいかな」という自己判断は危険です。豊胸後のバストは、天然のバストとはハリや弾力が異なるため、同じカップ数でもフィット感が違うことがあります。下着専門店でフィッティングを行い、以下のポイントを確認してください。
- ワイヤーの幅: シリコンバッグの底辺の幅(直径)と、ブラジャーのワイヤーの幅が合っているか。幅が狭いとバッグを圧迫し、破損や変形の原因になります。
- カップの深さ: 豊胸バストはお椀型に高さが出やすいため、浅いカップだと胸が溢れてしまいます。深めのカップ構造のものを選びましょう。
ブラジャー選びのチェックリスト
- ● 術後3ヶ月までは「寄せて上げる」機能のある補正下着は絶対に使用しない
- ● 寝る時は必ず「ナイトブラ」を着用し、横流れとバッグのズレを防ぐ
- ● 新しい下着を買う際は、店員さんに「豊胸手術をした」と伝えて選んでもらうのがベスト
8. 加齢によってバストの形はどう変化する?
「手術直後は綺麗でも、おばあちゃんになったら不自然になるのでは?」という長期的な不安もよく耳にします。私たちの体は加齢とともに変化しますが、人工物であるシリコンバッグは変化しません。この「体とバッグのエイジングのズレ」が、将来的な見た目の変化を生む要因となります。
「バッグは下がらないが、皮膚は下がる」問題
加齢により皮膚の弾力が失われ、クーパー靭帯が緩むと、自然なバストと同じように豊胸後のバストも下垂します。
しかし、大胸筋下法などで筋肉によってガッチリと固定されたシリコンバッグは、高い位置に留まり続けようとします。その結果、バッグの位置はそのままで、ご自身の乳腺組織や皮膚だけが垂れ下がり、段差ができてしまう現象(ダブルバブル変形やスヌーピー変形)が起こることが稀にあります。
- 予防策: 若いうちからナイトブラなどで皮膚の伸びを予防すること、そしてサイズの大きすぎる(重すぎる)バッグを選ばないことが重要です。重力による負荷を減らすことが、将来の下垂予防に直結します。
脂肪注入豊胸の場合のエイジング
一方で、脂肪注入豊胸の場合は、注入された脂肪が生着した後は「自分の体の一部」として機能します。つまり、加齢とともに自然に全体が柔らかくなり、自然に下垂していきます。
シリコンバッグのような「人工物だけが取り残される不自然さ」は生じにくいため、エイジングという観点では脂肪注入の方がナチュラルな経過を辿ると言えます。ただし、加齢による体重減少で胸の脂肪も減ってしまい、サイズダウンする可能性はあります。
10年後、20年後のメンテナンス
豊胸手術は「一度やれば一生メンテナンスフリー」というものではありません。特にシリコンバッグには寿命はありませんが、体型の変化に合わせて入れ替えや抜去が必要になるケースがあります。
「バッグが破損していなくても、10〜15年を目安に入れ替えを検討する」というのが一般的ですが、これは必須ではありません。定期的なエコー検診でバッグの状態と周囲の組織を確認し、問題がなければそのまま使い続けても大丈夫です。何かあった時にすぐ相談できるかかりつけ医との関係を維持しておくことが、将来の安心につながります。

9. 豊胸後の体重増減による影響
ダイエットを頑張って痩せたり、妊娠や生活環境の変化で太ったりと、体重の変動は誰にでも起こり得ます。豊胸手術後のバストは、この体重変化にどう反応するのでしょうか。「痩せたら胸だけ残って不自然になる?」といった疑問にお答えします。
脂肪注入は「体重連動型」
脂肪注入豊胸で定着した脂肪は、お腹や太ももの脂肪と同じく、あなたのエネルギー貯蔵庫です。したがって、体重が増えれば胸も大きくなり、痩せれば胸も小さくなります。
- メリット: 体型変化に合わせて自然にバストも変化するため、見た目の違和感が出にくいです。
- デメリット: 術後に過度なダイエットをすると、せっかく定着した脂肪が燃焼され、元のサイズに戻ってしまう恐れがあります。キープしたいなら、体重維持が必要です。
シリコンバッグは「体重不変型」
対してシリコンバッグの大きさは変わりません。あなたが10kg痩せても、胸のボリューム(バッグの容量分)は維持されます。
これには注意が必要です。もし術後に激痩せしてしまうと、胸の周りの皮下脂肪が減少し、皮膚の上からバッグの縁(エッジ)が浮き出て見えたり、触った時にバッグの感触が分かりやすくなったりする「リプリング」という現象が起きやすくなります。特に皮膚が薄い方は、痩せすぎると「入れている感」が強くなってしまうリスクがあることを知っておきましょう。
10. 手術後の生活の不安を解消します
ここまで、具体的なシーンごとのQ&Aを見てきましたが、最後にメンタル面や長期的な付き合い方についてお話しします。豊胸手術は、コンプレックスを解消し、自分に自信を持つための手段です。しかし、術後の些細な変化に過敏になりすぎて、生活を楽しめなくなってしまっては本末転倒です。
「異物感」とはどう付き合う?
シリコンバッグを入れた場合、最初は胸に何かが乗っているような重みや、突っ張るような異物感を感じることがあります。これは身体が変化に適応しようとしている過程であり、通常は半年〜1年かけて徐々に自分の身体の一部として馴染んでいきます。
人間の適応能力は素晴らしいもので、最初は気になっていた重さも、いつの間にか当たり前の感覚になります。「違和感があるのは失敗ではないか」と焦らず、身体が馴染むのをゆっくり待つ余裕を持つことが大切です。
定期検診を「安心の材料」にする
「もし中で破れていたらどうしよう」「カプセル拘縮が起きていないかな」といった見えない不安を解消する唯一の方法は、医療機関でのチェックです。
- 1年に1回のエコー検診: 誕生月や手術を受けた月など、時期を決めて年に一度はクリニックでエコー検診を受けましょう。バッグの状態を可視化することで、「今年も大丈夫だった」という確信を持って生活できます。
- セルフチェックの習慣化: お風呂上がりに鏡で形を見たり、優しく触れて硬さに変化がないか確認したりする習慣をつけましょう。小さな変化に早く気づければ、対処の選択肢も広がります。
豊胸手術はゴールではなく、新しい自分とのパートナーシップの始まりです。正しい知識と適切なケアがあれば、豊胸後の生活は決して制限だらけの不自由なものではなく、おしゃれや自信に満ちた素晴らしいものになるはずです。
理想のバストと長く幸せに付き合うために
豊胸手術後の生活に関する疑問や不安について、さまざまな角度から解説してきました。手術を検討する際、どうしても「理想のサイズになるか」という結果ばかりに目が行きがちですが、その後の長い人生をどう過ごすかという視点はそれ以上に大切です。
今回の記事でお伝えしたかった核心は、以下の点に集約されます。
- 豊胸手術をしても、適切なケアを行えば授乳やスポーツ、旅行などの楽しみを諦める必要はない。
- ただし、術後数ヶ月の「ダウンタイム期間」だけは、一生の仕上がりを守るために医師の指示による制限を徹底して守る必要がある。
- 加齢や体重変化によるリスクを理解し、定期検診を受けることで、将来的な不安はコントロールできる。
もし今、手術を受けるかどうか迷っているなら、まずは気になっているクリニックのカウンセリングに足を運んでみてください。そして、医師に「私のライフスタイル(よく運動する、将来子供が欲しいなど)だと、どの術式が一番生活しやすいですか?」と投げかけてみましょう。
明日からできるアクションとして、まずはご自身の普段の下着のサイズを正しく測り直してみることをおすすめします。自分の現状を知ることが、理想への第一歩です。正しい知識を持って選択した豊胸手術は、あなたのこれからの毎日をより輝かせる、強力な味方になってくれるでしょう。
豊胸後の生活に関するよくある質問
A. 一時的に鈍くなることがありますが、多くは半年〜1年で回復します。
手術操作により一時的に神経が麻痺することがありますが、徐々に戻ります。ただし、乳輪切開などで神経が切断された場合、稀に感覚が戻りにくいケースもあります。
A. 術式や経過によりますが、完全に区別がつかないレベルも可能です。
脂肪注入や、近年の柔らかいシリコンバッグを大胸筋下に入れた場合は非常に自然です。ただし、痩せ型で大きなバッグを入れた場合、縁の感触で気づかれる可能性はあります。
A. 多くの最新バッグ(テクスチャードタイプ等)ではマッサージ不要です。
昔のバッグは拘縮予防のマッサージが必須でしたが、現在は逆にマッサージが組織への刺激となり、トラブルの原因になるとして「マッサージ禁止」のクリニックが増えています。
A. 可能ですが、皮膚のたるみが残る可能性があります。
抜去自体は可能ですが、伸びた皮膚が余ってシワになることがあります。その場合、同時に皮膚のたるみ取り手術や、脂肪注入を行って形を整えることが推奨されます。


