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COLUMN医師監修コラム

シリコンバッグ豊胸の全て|種類・サイズ選びから費用・ダウンタイムまで

2025.09.28

女性らしい、ふっくらと美しいバストラインは、多くの女性にとっての憧れです。しかし、自己流のケアではサイズアップが難しく、コンプレックスを抱えている方も少なくありません。そうした悩みを解決し、理想のバストを叶えるための確実な選択肢の一つが「シリコンバッグ豊胸」です。この施術は、医学的に認められた安全性の高いシリコンジェルが充填されたバッグを胸に挿入することで、一度の施術で確実なサイズアップと、持続的な効果を実現します。本記事では、これからシリコンバッグ豊胸を検討する方のために、その基本から、バッグの最新の種類、後悔しないためのサイズ選び、ダウンタイムやリスク、そして自然な仕上がりを実現するための最新技術まで、あらゆる情報を網羅し、専門的かつ徹底的に解説していきます。  

1. シリコンバッグ豊胸とはどんな施術?

シリコンバッグ豊胸術は、医療用のシリコン製バッグ(インプラント)を乳腺下または大胸筋下に挿入することで、バストのサイズアップや形の改善を行う豊胸手術です。脂肪注入豊胸やヒアルロン酸豊胸など、他の豊胸術と比較して、一度の施術で2カップ以上の大幅なサイズアップが可能であり、その効果が長期間持続するのが最大の特徴です。

シリコンバッグの構造

現在使用されているシリコンバッグは、何層にもなった丈夫な医療用シリコンの外膜(シェル)と、その中に充填された「コヒーシブシリコンジェル」で構成されています。このジェルは、粘着性が高く、仮にバッグが破損しても体内に流れ出たり、拡散したりしにくい性質を持っています。一昔前の液状シリコンとは異なり、非常に高い安全性が確立されているのが特徴です。その感触も、人体の脂肪に近い柔らかさを追求して開発されており、年々進化を続けています。

他の豊胸術との違い

  • 脂肪注入豊胸との比較: 脂肪注入は、ご自身の脂肪を吸引してバストに注入するため、アレルギー反応などのリスクがなく、非常に自然な感触が魅力です。しかし、注入した脂肪の生着率には個人差があり、サイズアップは1〜1.5カップ程度が限界です。また、痩せ型で吸引する脂肪が十分にない方は適応となりません。一方、シリコンバッグは体型に関わらず、希望に応じた大幅なサイズアップが可能です。
  • ヒアルロン酸豊胸との比較: ヒアルロン酸注入は、注射のみで手軽に行えるのがメリットですが、効果は永久ではなく、1〜2年で体内に吸収されてしまいます。また、多量に注入するとしこりになるリスクもあります。シリコンバッグは、外科手術であるためダウンタイムは必要ですが、一度挿入すれば半永久的にその形と大きさを維持できます。
シリコンバッグ豊胸は、確実なボリュームアップと持続性を求める方、痩せ型で脂肪注入が難しい方、そして理想のバストラインをデザインしたいと考える方にとって、最も効果的で満足度の高い選択肢の一つと言えるでしょう。

2. バッグの種類(モティバ等)とそれぞれの特徴

シリコンバッグ豊胸の仕上がりや満足度を左右する最も重要な要素の一つが、「バッグ(インプラント)選び」です。現在、世界中のメーカーから多種多様なバッグが開発されており、それぞれに形状、表面の性状、内容物のジェルの特性が異なります。ここでは、代表的なバッグの種類とその特徴について解説します。

① 形状による分類

  • ラウンド型(お椀型): 全体が均一に丸い形をしており、デコルテ(胸の上部)からしっかりとボリュームを出したい方や、華やかでゴージャスな印象のバストを希望する方に適しています。立ち上がった時も、寝転がった時も、形が崩れにくいのが特徴です。
  • アナトミカル型(しずく型): 上部が薄く、下部に向かって膨らんでいる、涙のしずくのような形状です。元々の乳房の形に近い自然なシルエットを作りやすく、特に、元々のバストが小さい方や、痩せ型の方でもナチュラルな仕上がりが期待できます。

② 表面の性状(テクスチャー)による分類

  • スムースタイプ: 表面がツルツルしているタイプです。バッグが胸の組織内で自由に動きやすいため、体勢の変化に応じた自然な動きや、非常に柔らかい感触が得られます。ただし、動きやすいがゆえに、術後にバッグの位置がずれてしまうリスクが、テクスチャードタイプに比べてわずかに高いとされています。
  • テクスチャードタイプ: 表面がザラザラと微細な凹凸加工がされているタイプです。この凹凸が周囲の組織と癒着することで、バッグの位置がずれにくく、固定されやすいのが特徴です。また、バッグの周りに形成される被膜(カプセル)が過剰に厚くなる「カプセル拘縮」のリスクを低減させる効果があると考えられてきました。しかし近年、一部のテクスチャードタイプで「BIA-ALCL」というリンパ腫のリスクが指摘され、現在ではより表面の凹凸が細かい「マイクロテクスチャー」や「ナノテクスチャー」が主流となっています。

③ 代表的な最新シリコンバッグ

  • Motiva(モティバ): 近年、世界的に非常に高い評価を得ているシリコンバッグです。表面は「ナノテクスチャー」に分類され、シルクのような滑らかさを持ちながら、組織との親和性も高いのが特徴です。最大の特徴は、人間工学に基づいた「エルゴノミクス」という設計です。中のジェルが体の動きに合わせて自然に移動するため、起き上がっている時はアナトミカル型のように自然な下重心となり、寝転がるとラウンド型のように自然に広がるという、両者の利点を兼ね備えています。
  • BellaGel(ベラジェル): 柔らかさに定評のあるシリコンバッグです。非常に流動性の高いジェルを使用しており、触り心地が人体の脂肪に極めて近いとされています。元々のバストにある程度の柔らかさがある方が使用すると、非常に自然な感触が期待できます。
どのバッグが最適かは、患者様自身の体の特徴(骨格、皮膚の厚み、乳腺の量)や、希望するバストのイメージによって異なります。カウンセリングで実際にサンプルに触れ、それぞれの特徴について医師と十分に相談して決定することが重要です。

3. 後悔しないためのサイズの選び方とシミュレーション

シリコンバッグ豊胸で最も多い「後悔」の理由の一つが、「サイズの選択ミス」です。「思ったより小さくて満足できなかった」「大きすぎて不自然になった、肩こりがひどい」といった事態を避けるためには、単なる憧れや希望カップ数だけでなく、医学的・客観的な視点に基づいたサイズ選びが不可欠です。

サイズ選びで考慮すべき重要ポイント

  • 身体的な特徴(ボディフレーム):
    • バストの横幅(乳房底面幅): 挿入するバッグの横幅は、ご自身のバストの土台の幅を超えるべきではありません。これを超えると、バッグが脇からはみ出したり、不自然な形になったりする原因となります。
    • 皮膚の伸展性: 皮膚がどれだけ伸びる余裕があるか。皮膚の余裕以上に大きなバッグを入れると、皮膚が張りすぎて不自然に見えたり、「リップリング」(バッグの縁が波打って見える現象)のリスクが高まったりします。
    • 大胸筋の大きさや肋骨の形: バッグを挿入するスペースの広さや形にも影響します。
  • 現在のバストの状態: 元々の乳腺の量や脂肪の多さも重要です。皮下脂肪が薄い方が大きなバッグを入れると、バッグの輪郭が浮き出て見えやすくなります。
  • ライフスタイルと将来の計画: アクティブなスポーツを頻繁に行うか、将来的に出産や授乳を考えているかなど、ご自身のライフスタイルも考慮に入れる必要があります。

最新のシミュレーション技術の活用

言葉や写真だけでは、術後のイメージを正確に共有するのは困難です。そのため、多くのクリニックでは、客観的なシミュレーションツールを導入しています。
  • 3Dシミュレーション(VECTRA®など): 専用のカメラでご自身の体を3D画像として撮影し、コンピューター上で様々なサイズや種類のバッグを挿入した場合の術後イメージを、あらゆる角度からリアルにシミュレーションするシステムです。
    • メリット:
      • 客観的なイメージ共有: 「〇〇ccのバッグを入れたら、どのくらいの大きさになるか」を視覚的に確認できるため、医師と患者間のイメージの齟齬をなくせます。
      • 左右差の調整: 元々ある左右差を、異なるサイズのバッグで調整した場合のシミュレーションも可能です。
      • 満足度の向上: 術後の姿を事前に見ることで、過度な期待を防ぎ、納得して手術に臨むことができます。
  • バッグサイザーによる体感: 実際に挿入するバッグと同じサイズ・重さの「サイザー」を、専用のブラジャーの中に入れて、服を着た状態での見え方や重さを体感します。これにより、日常生活を送る上でのボリューム感や感覚を、より現実的に把握することができます。
最終的なサイズの決定は、これらのシミュレーション結果と、解剖学を熟知した医師によるプロの視点を組み合わせて行うことが最も重要です。「何cc入れたい」という希望を伝えるだけでなく、「なぜそのサイズが良いのか」を医師と徹底的に話し合い、お互いが納得するゴールを見つけることが、後悔しない豊胸手術への第一歩です。

4. 切開する場所(脇の下、乳房下)と傷跡について

シリコンバッグを体内に挿入するためには、必ずどこかを切開する必要があります。この切開する場所(アプローチ)は、主に「脇の下(腋窩切開法)」「乳房の下(乳房下溝切開法)」の2つがあり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。傷跡は、豊胸手術を検討する上で誰もが気になる点であり、自身の希望やライフスタイルに合わせて最適な方法を選択することが重要です。

① 脇の下からのアプローチ(腋窩切開法)

  • 方法: 脇の下のシワに沿って、3〜4cmほど切開し、そこから大胸筋の下まで剥離してバッグを挿入します。
  • メリット:
    • バスト本体に傷が残らない: 最大のメリットは、乳房そのものに一切傷がつかない点です。そのため、水着や下着になっても、他人に豊胸手術を受けたことがバレにくいです。腕を上げて脇をじっくりと見られない限り、傷跡はほとんど目立ちません。
  • デメリット:
    • 高い技術力が必要: 切開部からバッグを挿入するポケットまでの距離が長いため、医師には正確な剥離操作と止血技術が求められます。特に、内視鏡を用いて血管や神経を直視しながら行うことで、より安全で正確な手術が可能になります。
    • ダウンタイム中の腕の動きの制限: 術後しばらくは、腕を上げる動作が制限されます。
    • 再手術の難易度: 万が一、将来的にバッグの入れ替えなどが必要になった場合、同じ脇の傷から行うのは難しく、乳房下切開が必要になることがあります。

② 乳房の下からのアプローチ(乳房下溝切開法)

  • 方法: 乳房と胴体の境目にあるシワ(乳房下溝)に沿って、4〜5cmほど切開し、そこからバッグを挿入します。
  • メリット:
    • 手術操作のしやすさと正確性: 切開部から挿入ポケットまでの距離が最も短く、医師が直視下で手術を行えます。そのため、剥離や止血が確実で、バッグを理想的な位置に正確に設置しやすいです。カプセル拘縮などのリスクが比較的低いとされています。
    • 再手術の容易さ: 将来的なバッグの入れ替えや抜去も、同じ傷から容易に行うことができます。
  • デメリット:
    • バスト自体に傷が残る: 直立している状態では、バストの影に隠れて傷はほとんど見えませんが、仰向けに寝た時や、腕を上げた時に、傷跡が見えてしまう可能性があります。傷の治り方には個人差があります。

傷跡の経過とケア

どちらの方法を選択しても、傷跡は必ず残ります。しかし、経験豊富な医師による丁寧な縫合と、適切なアフターケアによって、最終的にはかなり目立たない状態にすることが可能です。
  • 経過: 術後すぐは赤みを帯びていますが、3ヶ月〜半年ほどで徐々に茶色っぽく変化し、最終的には1年ほどかけて白っぽい一本の線となり、周囲の皮膚に馴染んでいきます。
  • ケア: 術後は、傷跡に負担がかからないように保護テープを貼ったり、必要に応じて内服薬や外用薬を使用したりします。
どちらのアプローチが優れているということではなく、それぞれの特徴を理解した上で、ご自身が「どこに傷があるのが最も気にならないか」を基準に、医師と相談して決定することが大切です。

5. シリコンバッグ豊胸のダウンタイムと痛み

シリコンバッグ豊胸は外科手術であるため、術後の回復期間である「ダウンタイム」が必ず発生します。この期間にどのような症状が現れ、どのように過ごせばよいのかを事前に詳しく知っておくことは、不安を軽減し、スムーズな回復と美しい仕上がりのために非常に重要です。

ダウンタイムの一般的な経過

ダウンタイムの期間や症状の程度には個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。
  • 手術当日〜3日目(痛みのピーク):
    • 症状: 麻酔が切れた後、筋肉痛のような強い痛み、胸の圧迫感、熱感などが現れます。この期間が、痛みと腫れのピークです。クリニックから処方される鎮痛剤を服用することで、日常生活を送ることは可能ですが、無理は禁物です。腕を上げる、重い物を持つといった動作は困難です。
  • 手術後4日目〜1週間:
    • 症状: 強い痛みは徐々に和らいでいきます。内出血が出ている場合は、黄色っぽく変化しながら広がることがあります。腫れやむくみも続きますが、ピークは過ぎています。多くの場合、この時期にドレーン(血を抜く管)の抜去や、固定のドレッシングの交換が行われます。
    • 過ごし方: デスクワークなど、身体的な負担の少ない仕事であれば、術後5日〜1週間程度で復帰する方が多いです。
  • 手術後2週間〜1ヶ月:
    • 症状: 日常生活における痛みはほとんどなくなります。大きな腫れや内出血もほぼ消失しますが、まだバストは硬く、張り感が強い状態です。傷口が治る過程で、痒みを感じることがあります。
    • 過ごし方: 軽い運動やストレッチは可能になりますが、胸に負担がかかる激しい運動はまだ禁止です。
  • 手術後1ヶ月〜3ヶ月:
    • 症状: バストの硬さが取れ始め、徐々に柔らかさが出てきます。圧迫感もほとんどなくなり、見た目も自然な丸みを帯びてきます。
    • 過ごし方: ほとんどの運動制限が解除され、ワイヤー入りのブラジャーの着用も可能になることが多いです。
  • 手術後3ヶ月〜6ヶ月(完成):
    • 症状: バッグが完全に体内に馴染み、柔らかさや動きも自然になります。傷跡の赤みも引いてきて、ほぼ完成形と言える状態です。

痛みへの対策

  • 鎮痛剤: クリニックから処方される鎮痛剤を、指示通りに服用します。痛みを我慢しすぎると、かえって回復が遅れることもあるため、無理せず使用しましょう。
  • 麻酔の工夫: クリニックによっては、手術中に長時間効果が持続する「肋間神経ブロック」という麻酔を併用することで、術後2〜3日間の痛みを大幅に軽減させる工夫を行っています。

術後の固定(豊胸バンド・サポーター)

術後、しばらくの間はバストを固定するための専用のバンドやサポーターを着用します。これは、挿入したバッグを正しい位置に安定させ、ポケットの癒着を促すとともに、腫れや内出血を最小限に抑えるための非常に重要な役割を果たします。医師の指示に従い、自己判断で外したりしないようにしましょう。 ダウンタイムは決して楽な期間ではありませんが、その先に理想のバストが待っていると考え、医師の指示をしっかりと守り、焦らずに回復に専念することが大切です。

6. 費用相場と料金の内訳

シリコンバッグ豊胸は、自由診療のため健康保険の適用外となり、費用は全額自己負担です。その金額は、使用するバッグの種類、クリニックの方針、医師の技術料などによって大きく変動します。ここでは、費用の一般的な相場と、提示された料金に何が含まれているのかを確認するためのポイントを解説します。

シリコンバッグ豊胸の費用相場

全体的な費用相場は、おおよそ80万円〜150万円の範囲に収まることが多いです。この価格の幅は、主に以下の要因によって生まれます。
  • 使用するバッグの種類:
    • 一般的に、Motiva(モティバ)やBellaGel(ベラジェル)といった最新世代の高品質なバッグは、従来のものより高価になる傾向があります。バッグの費用だけで10万円以上の差が出ることがあります。
  • 医師の技術料と経験:
    • 豊胸手術を専門とし、豊富な経験と実績を持つ著名な医師が執刀する場合、その技術料は高く設定されます。特に、内視鏡を用いた精密な手術など、高度な技術を要する場合は価格に反映されます。
  • 手術方法と麻酔の種類:
    • 脇の下からの内視鏡手術は、乳房下切開よりも手間がかかるため、高くなることがあります。
    • 麻酔も、局所麻酔に加えて静脈麻酔や全身麻酔を用いるため、専門の麻酔科医が立ち会う場合は、その分の費用が加算されます。
  • クリニックの設備とサポート体制:
    • 最新の3Dシミュレーション機器や、安全管理のための高度な医療設備、充実したアフターフォロー体制なども、価格に含まれる要素です。

料金の内訳(チェックすべき項目)

クリニックから提示された見積もり金額が「どこまでを含んだ料金なのか」を明確に確認することは、後々のトラブルを避けるために非常に重要です。一般的に、以下の項目が含まれているかをチェックしましょう。
  • カウンセリング料: 無料の場合と、有料の場合があります。
  • 術前検査料: 血液検査や心電図など、安全に手術を行うための検査費用。
  • シリコンバッグ代: 選択したバッグそのものの費用。
  • 手術手技料: 執刀医の技術料。
  • 麻酔代: 麻酔薬の費用と、麻酔科医の技術料。
  • 薬代: 術後に処方される抗生剤、鎮痛剤、外用薬などの費用。
  • 術後処置・検診料: 術後のドレーン抜去や抜糸、定期的な検診の費用。
  • 保証制度: 万が一、カプセル拘縮やバッグの破損などが起きた場合の再手術保証の費用。
「一式〇〇円」という表記だけでなく、これらの内訳が詳細に記載されているかを確認してください。特に、術後の検診や保証がどこまで料金に含まれているかは、クリニックの誠実さを見極める上での重要なポイントです。極端に安い価格を提示している場合は、必要な検査やアフターフォローが料金に含まれていない可能性もあるため、注意が必要です。価格だけで判断せず、安全性、技術力、サポート体制とのバランスを総合的に見て、納得できるクリニックを選びましょう。

7. バッグの寿命とメンテナンスの必要性

「シリコンバッグは10年で入れ替えないといけない」という話を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは一昔前の情報です。現在の高品質なシリコンバッグは、耐久性が飛躍的に向上しており、明確な「寿命」や「交換時期」は定められていません。 しかし、それは「一生そのままで何もしなくて良い」という意味ではなく、安全で美しいバストを維持するためには、定期的なメンテナンス(検診)が不可欠です。

シリコンバッグの耐久性と破損のリスク

  • 耐久性: 現在のシリコンバッグは、非常に丈夫な多層構造の外膜で作られており、人が乗ったり、車で轢いたりしても破れないほどの強度を持っています。日常生活における衝撃や、マンモグラフィ検査の圧迫などで簡単に破損することは、まずありません。
  • 破損の種類: 破損には、強い衝撃などによってバッグが裂ける「亀裂破損」と、長年の使用でシリコンジェルが外膜からじわじわと染み出す「被膜内漏出(ブリーディング)」があります。
  • サイレント・ラプチャー(無症状破損): 最新のコヒーシブシリコンジェルは、万が一破損してもジェルが流れ出さず、バッグの形状を保つため、痛みや見た目の変化といった自覚症状がほとんどない「サイレント・ラプチャー」が起こり得ます。本人が気づかないうちに破損している可能性があるため、定期的な画像検査が重要になるのです。

必要なメンテナンス(定期検診)

挿入したバッグの状態や、乳がんの早期発見のためにも、豊胸手術後は定期的に乳腺専門のクリニックや、手術を受けたクリニックで検診を受けることが強く推奨されます。
  • 検診の頻度: 術後10年までは2年に1回、10年目以降は1年に1回が一般的な目安です。
  • 検診の内容:
    • 超音波(エコー)検査: 最も手軽に行える検査です。バッグの周辺の状態(被膜の状態や体液の貯留など)や、バッグの明らかな変形を確認できます。乳がん検診も同時に行えます。
    • MRI検査: バッグの破損を診断するために、最も精度の高い検査です。サイレント・ラプチャーの有無を確実に調べることができます。アメリカ食品医薬品局(FDA)も、豊胸後の定期的なMRI検査を推奨しています。
    • マンモグラフィ検査: 乳がん検診として一般的ですが、シリコンバッグ豊胸後は注意が必要です。バッグを破損させないよう、豊胸手術を受けたことを必ず技師に伝え、対応可能な施設で受ける必要があります。バッグが画像に写り込み、乳腺組織が見えにくくなることがあるため、エコー検査との併用が望ましいです。

バッグの入れ替えを検討するケース

明確な寿命はありませんが、以下のような場合には、バッグの入れ替えや抜去を検討することがあります。
  • 定期検診でバッグの破損が見つかった場合
  • カプセル拘縮など、何らかのトラブルが発生した場合
  • 年齢を重ね、バストのサイズやデザインを変更したくなった場合
シリコンバッグは「入れたら終わり」ではありません。ご自身の体の一部として、責任を持って定期的に状態を確認し、メンテナンスを行っていくことが、長期的な安心と満足に繋がるのです。

8. カプセル拘縮などのリスクと予防法

シリコンバッグ豊胸は、確立された安全性の高い手術ですが、外科手術である以上、リスクがゼロではありません。最も代表的な合併症である「カプセル拘縮」をはじめ、いくつかのリスクについて正しく理解し、その予防法を知っておくことは、安心して手術に臨むために不可欠です。

① カプセル拘縮(こうしゅく)

  • 症状: 体内にバッグという異物が入ると、体の防御反応として、その周りに薄い膜(被膜=カプセル)が形成されます。これは正常な反応ですが、何らかの原因でこの被膜が異常に厚く、硬く縮んでしまう状態が「カプセル拘縮」です。 症状の進行度(Baker分類)によって、以下のように分けられます。
    • Grade I: 正常。見た目も柔らかさも問題ない。
    • Grade II: 見た目は自然だが、触ると少し硬さを感じる。
    • Grade III: 見た目にもバストが硬そうで、不自然な丸い形(お椀を伏せたような形)になる。
    • Grade IV: バストが硬く変形し、痛みを伴う。
  • 原因: はっきりとした原因は未だに解明されていませんが、術後の血腫(内出血の塊)、感染、体質などが関与していると考えられています。
  • 予防法:
    • 丁寧な手術操作: 術中の出血を最小限に抑える、感染対策を徹底するなど、医師の丁寧で精密な技術が最も重要です。
    • 適切なバッグの選択: 表面が滑らかなスムースタイプより、マイクロテクスチャータイプの方が拘縮のリスクが低いというデータもあります。
    • 術後の圧迫固定: 術後の指示通りに固定バンドを着用し、バッグを安定させることが重要です。
    • 内服薬: 拘縮を予防する効果のある内服薬(抗アレルギー薬など)を処方するクリニックもあります。

② その他のリスク

  • リップリング: 皮膚が薄い方や、皮膚の伸展性のわりに大きすぎるバッグを入れた場合に、バッグの縁が皮膚の表面から波打つように見えてしまう現象です。適切なサイズのバッグを選ぶことや、バッグの一部を大胸筋の下に入れる「デュアルプレーン法」などで予防します。
  • ボトミングアウト: 時間とともにバッグの重みで乳房の下側が伸びてしまい、バッグが本来の位置より下方に落ちて、乳頭が上向きになってしまう状態です。適切なサイズのポケット作成と、術後の固定が予防に繋がります。
  • BIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫): 豊胸バッグの周囲に発生する、極めて稀なリンパ腫の一種です。主に、表面の凹凸が粗い一部のテクスチャードタイプのバッグで報告が多く、因果関係が指摘されています。近年の主流であるスムースタイプやマイクロ・ナノテクスチャータイプのバッグでは、リスクは大幅に低いと考えられています。術後数年経ってから、急な腫れや痛み、しこりなどの症状で発症します。
これらのリスクを過度に恐れる必要はありませんが、「絶対に安全」という言葉を鵜呑みにせず、リスクについても正直に、そして詳しく説明してくれる誠実な医師を選ぶことが、何よりも大切なリスク管理と言えるでしょう。

9. 自然な見た目と感触に仕上げるための豊胸術

「豊胸したことがバレバレな、不自然なバストにはなりたくない」——。これは、シリコンバッグ豊胸を検討するすべての方が共通して願うことでしょう。近年の豊胸技術は飛躍的に進化しており、正しい知識と技術を持つ医師が、適切なバッグを選択し、最新の術式で手術を行えば、専門家でさえ見分けるのが難しいほど自然な見た目と感触を実現することが可能です。

自然に見せるための鍵①:バッグの挿入位置(デュアルプレーン法)

自然なバストは、デコルテからなだらかなスロープを描き、下半分にボリュームがあります。この形を再現するために、現在多くの専門医が採用しているのが「デュアルプレーン法(Dual Plane法)」です。
  • 方法: これは、シリコンバッグの上半分を「大胸筋の下」に、下半分を「乳腺の下」にまたがるように挿入する方法です。
  • 効果:
    • なだらかなデコルテ: バッグの上部が大胸筋に覆われることで、バッグの輪郭が浮き出るのを防ぎ、デコルテラインが非常に自然なスロープになります。
    • 十分なボリュームと動き: バッグの下半分は筋肉に押さえつけられないため、乳腺下と同様にバストの下側のボリュームをしっかりと出し、自然な揺れや動きも生まれやすくなります。
    • リップリングの予防: 皮膚が薄いデコルテ部分が筋肉でカバーされるため、バッグの縁が波打って見えるリップリングのリスクを低減できます。
このデュアルプレーン法は、乳腺下法と大胸筋下法の「良いとこ取り」をした、非常に優れた術式ですが、正確に行うには高度な技術が要求されます。

自然に見せるための鍵②:バッグの選択

前述の通り、バッグ選びも自然さを左右します。
  • エルゴノミクス設計のバッグ(Motivaなど): 体の動きに合わせてジェルの重心が移動し、立っている時はしずく型に、寝るとラウンド型に形が変化するバッグは、本物のバストの動きに近く、非常に自然です。
  • 柔らかいジェルのバッグ(BellaGelなど): 元々のバストの柔らかさに近い感触のジェルを選ぶことで、触り心地の違和感を最小限に抑えることができます。

自然に見せるための鍵③:トータルバランス

  • 適切なサイズ選択: ご自身の骨格や皮膚の厚みを無視したオーバーサイズのバッグは、不自然さの最大の原因です。3Dシミュレーションなどを活用し、専門医と相談の上で、全身のバランスを見て調和のとれたサイズを選ぶことが不可欠です。
  • 脂肪注入とのハイブリッド豊胸: より完璧な自然さを追求する場合、シリコンバッグで土台となるボリュームを作り、その上からご自身の脂肪を少量注入する「ハイブリッド豊胸」という選択肢もあります。脂肪を注入することで、バッグの輪郭をさらにカモフラージュし、究極の柔らかさと自然な見た目を手に入れることが可能です。
「いかにも」な豊胸が主流だった時代は終わり、現在は、いかに自然に、美しく仕上げるかという「質」が問われる時代です。これらの最新技術を駆使できる、経験豊富な医師に託すことが、理想のナチュラルバストへの最も確実な道となります。

10. シリコンバッグ豊胸で理想のバストを叶える

シリコンバッグ豊胸は、数ある豊胸術の中で、最も確実で劇的な変化をもたらし、多くの女性のコンプレックスを自信に変えてきた、歴史と実績のある施術です。かつての「硬い」「不自然」「危険」といったネガティブなイメージは、技術の進歩によって過去のものとなり、現在では、安全性と自然さを極限まで追求した、洗練された医療技術へと進化しています。 本記事で解説してきたように、その成功は、多くの要素の掛け算によって成り立っています。
  • 人間工学に基づいて設計された、高品質なシリコンバッグの選択。
  • 3Dシミュレーションなどを駆使した、客観的で後悔のないサイズ選び。
  • 傷跡と仕上がりを両立させるための、最適な切開アプローチの判断。
  • 自然なバストの形状を再現する、デュアルプレーン法などの高度な手術技術
  • そして、何よりも、これらの要素を統合し、あなたという一人の人間に対して最適な答えを導き出す、経験豊富で誠実な医師との出会い。
シリコンバッグ豊胸は、決して手軽な施術ではありません。ダウンタイムという回復期間を乗り越える覚悟も、決して安くはない費用も必要です。しかし、それらを乗り越えた先には、長年悩み続けた自分から解放され、ファッションを心から楽しみ、自分自身の体に誇りを持てる、新しい人生が待っているかもしれません。 もし今、あなたがご自身のバストに悩み、本気で変わりたいと願うなら、まずは一歩踏み出して、専門医のカウンセリングを受けてみてください。正しい情報を得て、専門家と対話することから、あなたの理想を叶えるための道は始まります。この記事が、そのための確かで心強い羅針盤となることを、心から願っています。  

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。

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