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COLUMN医師監修コラム

医療ダイエットと脂肪吸引の違い|どっちがあなたに適してる?

2026.01.17

「本気で痩せたい」「この気になる部分の脂肪さえなければ…」そう考えたとき、現代の美容医療には「医療ダイエット」と「脂肪吸引」という2つの強力な選択肢があります。どちらも医学の力で理想の体型を目指すものですが、そのアプローチ、目的、そしてリスクは全く異なります。

私自身長年、美容医療のトレンドや技術をリサーチしてきましたが、この2つを混同したまま「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも残念ながら少なくありません。医療ダイエットの注射を打てば、脂肪吸引のように二の腕が細くなると思っていた…あるいは、脂肪吸引をすれば体重が10kg減ると思っていた…これらは、典型的な「目的」と「手段」のミスマッチです。

あなたの悩みは、体重計の「数字」ですか? それとも、鏡に映る「ライン」ですか? ここでは、あなたの「痩せたい」という切実な願いに、どちらが本当に適しているのか、その本質的な違いを、現場の視点も交えながら徹底的に掘り下げていきます。

1. 目的の違い:体重減少か、ボディライン形成か

まず、あなたがどちらの扉を開くべきか、その運命を分ける最も重要な分岐点。それは「目的」の違いです。

この2つの施術は、似ているようで、そのゴール設定が根本から異なります。

  • 医療ダイエット (メディカルダイエット)主な目的は「体重減少」と「体脂肪の減少」です。これは、食事制限や運動といった自己流ダイエットの延長線上にあり、それを医学的な根拠(食欲抑制薬や代謝促進)に基づいて強力にサポートするアプローチです。基本的には「全身痩せ」を目指すものであり、体重計の数字を減らすことが得意です。
  • 脂肪吸引 (ボディコントアリング)主な目的は「ボディライン形成」(ボディコントアリング)です。これは、体重を減らすこと(減量)を第一の目的としていません。そうではなく、ダイエットではどうしても落ちない特定の部位の脂肪細胞を物理的に除去し、体のプロポーションを「彫刻」のように整える外科手術です。「部分痩せ」の最終手段とも言えます。

私が以前、話を聞いたある女性の例をご紹介します。彼女は「体重は標準なのに、二の腕だけが異常に太い」ことに悩んでいました。そこで彼女は医療ダイエット(GLP-1注射)を選択しました。結果、体重は3kg落ちたものの、顔や胸まで痩せてしまい、肝心の二の腕のラインは期待したほど変わらなかった、と。これは、彼女の真の目的が「体重減少」ではなく「二の腕のライン形成」であったため、手段の選択を誤った典型的なケースです。

まずは、この根本的な違いを理解することが、後悔しない選択への第一歩です。

 

比較項目 医療ダイエット 脂肪吸引
主な目的 体重減少、体脂肪減少(全身痩せ) ボディライン形成(部分痩せ)
アプローチ対象 代謝、食欲、脂肪細胞の縮小、内臓脂肪 特定部位の皮下脂肪細胞(物理的除去)
得意なこと 全体的なサイズダウン、体重計の数字を減らす 特定部位のデザイン、メリハリ作り、インチを減らす
体重への影響 (-5kg、-10kgなども目指せる) (脂肪は水より軽いため、体重はあまり変わらない)

関連記事:GLP-1ダイエット(サクセンダ・オゼンピック)の効果・副作用・費用

2. 医療ダイエット:全体的な減量と部分痩せ

医療ダイエットは、そのアプローチ方法によって、さらに「全身痩せ」と「部分痩せ」に分けられます。それぞれの特徴を理解しましょう。

1. 全身痩せをサポートする医療ダイエット
これらは主に、自己流ではコントロールが難しい「食欲」や「代謝」に医学的にアプローチし、体重減少の効率を最大化するものです。

  • GLP-1受容体作動薬(内服薬・注射):サクセンダ、リベルサス、オゼンピックなどがこれにあたります。元々は糖尿病治療薬ですが、「満腹感を高め、食欲を自然に抑制する」効果が注目され、ダイエット治療に応用されています。意志の力だけではどうにもならない過剰な食欲を抑えられるのが最大の強みで、全身の体重減少に大きな効果を発揮します。
  • その他の内服薬:糖や脂肪の吸収を抑える薬(ゼニカル、アカルボースなど)を併用することもあります。

2. 部分痩せを目指す医療ダイエット
こちらは、体重はそれほどでもないが「ここだけ気になる」という部位に、外科手術以外でアプローチする方法です。

  • 脂肪溶解注射(メソセラピー):カベリン(デオキシコール酸)やBNLSといった薬剤を気になる部位に注射し、脂肪細胞を溶解・排出させる方法。効果は比較的穏やかで、複数回の施術(例:5回〜10回)を重ねる必要があります。あご下やフェイスラインなど、狭い範囲に適しています。
  • 冷却痩身(クールスカルプティングなど):脂肪細胞が水よりも高い温度(約4℃)で凍る性質を利用し、専用の機器で皮膚の上から脂肪層を冷却・破壊する方法。非侵襲的(針もメスも使わない)で、ダウンタイムが少ないのが特徴です。下腹部や二の腕などに使われます。
  • 医療EMS(電磁波):エムスカルプトなどが代表的。強力な電磁波で筋肉を強制的に収縮させ、脂肪を燃焼させると同時に筋肉を増強します。これは「痩せる」というより「引き締める」アプローチです。

医療ダイエットの強みは、なんといっても体への負担(侵襲)が少ないこと。しかし、脂肪吸引に比べると、その効果は穏やかであるか、あるいは自己管理(GLP-1をやめた後の食生活など)が求められる、という側面があります。

 

医療ダイエットの種類 アプローチ 主な目的 痛み・ダウンタイム(目安)
GLP-1受容体作動薬 食欲抑制、血糖コントロール 全身の体重減少 自己注射の痛み、初期の吐き気・胃部不快感(個人差)
脂肪溶解注射 薬剤で脂肪細胞を溶解 部分痩せ(効果は穏やか) 注射の痛み、腫れ、内出血(数日〜1週間)
冷却痩身(クールスカルプティング) 脂肪細胞を冷却・破壊 部分痩せ(非侵襲) 施術中の冷たさ、赤み、術後の鈍痛(個人差)
医療EMS(エムスカルプト) 電磁波で筋肉を刺激 筋肉増強、基礎代謝アップ、引き締め 強い筋肉痛のような感覚、ダウンタイムなし

3. 脂肪吸引:確実に脂肪細胞を除去する

一方、脂肪吸引は、これら医療ダイエットとは全く異なるカテゴリーに属します。これは「治療」や「サポート」ではなく、「外科手術」です。

脂肪吸引の本質は、脂肪細胞の「数」を物理的に減らすことにあります。
私たちの体にある脂肪細胞の数は、思春期を過ぎるとほぼ一定になり、増えることはないと言われています。自己流のダイエットで太ったり痩せたりするのは、脂肪細胞の「数」が増減しているのではなく、一つひとつの細胞が「大きく」なったり「小さく」なったりしているだけです。だから、食事を元に戻せば、細胞は再び大きくなり「リバウンド」します。

脂肪吸引は、その脂肪細胞自体を、カニューレ(細い管)を使って体外に吸い出してしまう手術です。細胞の「数」そのものを減らしてしまうため、その部位はリバウンドのリスクが極めて低い(ゼロではありませんが)という、最大のメリットがあります。

【脂肪吸引が得意な部位】
ダイエットでは落ちにくい、頑固な「皮下脂肪」がターゲットです。

  • 二の腕(振袖部分)
  • 腹部(特に下腹部)と腰回り(ラブハンドル)
  • 太もも(特に内側や外側の張り出し)
  • お尻の下(バナナロール)
  • あご下(二重あご)

ここで何度も強調しなければならないのは、脂肪吸引は「体重を減らす手術ではない」ということです。脂肪は水よりも軽いため、例えばお腹から1000cc(1リットル)という大量の脂肪を吸引しても、体重は1kgも減りません(せいぜい700〜800g程度)。しかし、ウエストの「インチ」は劇的に変わります。

体重計の数字ではなく、あくまで「見た目(ライン)」を変える手術であると、強く認識する必要があります。

また、脂肪吸引は医師の「技術」と「美的センス」が結果を100%左右する手術です。多くのクリニックが「ボディデザイン」「ボディコントアリング」と呼ぶように、これは単なる「脂肪取り」ではありません。どこを吸引し、どこをあえて残すか、滑らかな曲線を描くか。そうしたデザイン力こそが、脂肪吸引の(そして医師の)価値なのです。

4. ダウンタイムと体への負担で比較

この2つの選択肢を分ける、最も現実的かつ大きな違いが「ダウンタイム(回復期間)」と「体への負担」です。ここをリアルに理解していないと、術後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。

【医療ダイエットのダウンタイム】
これは「ほぼゼロ」に近いと言えます。

  • GLP-1や内服薬: ダウンタイムはありません。ただし、人によっては初期(数日〜数週間)に吐き気、胃の不快感、便秘、下痢といった「副作用」が出ることがあります。これが日常生活に支障をきたす場合もありますが、外科的な「ダウンタイム」とは異なります。
  • 脂肪溶解注射・冷却痩身: 注射部位や施術部位に、数日〜1週間程度の腫れ、内出血、赤み、鈍痛が出ることがあります。しかし、これらはメイクや衣服で隠せる程度であり、仕事を休む必要はほぼありません。「隠せるダウンタイム」と言えるでしょう。

【脂肪吸引のダウンタイム】
こちらは、明確な「ダウンタイム」が存在する外科手術であり、医療ダイエットとは比較にならない覚悟が必要です。

  • 術直後〜3日目(ピーク):麻酔から覚めた直後から、強い痛み(筋肉痛の10倍、とよく表現されます)、腫れ、むくみ、広範囲の内出血に襲われます。処方される強力な痛み止めが必須です。日常生活(着替え、入浴、寝返り)にも大きな支障が出ます。この期間は安静が絶対です。
  • 術後1週間:多くのクリニックで抜糸が行われます(溶ける糸を使う場合もあり)。痛みは「激痛」から「鈍痛」に変わりますが、動くと痛みます。内出血はピークを過ぎ、黄色っぽく変色していきます。圧迫着(専用のガードルやサポーター)の着用が必須となります。
  • 術後1ヶ月:腫れや内出血はかなり引いてきますが、ここから「拘縮(こうしゅく)」と呼ばれる時期が始まります。吸引した部分の皮膚が硬くなり、凸凹したり、引きつれたり、感覚が鈍くなったりします。これは治癒過程の正常な反応ですが、多くの人が「失敗したのでは?」と不安になる時期でもあります。
  • 術後3ヶ月〜6ヶ月:この拘縮が徐々に和らぎ、組織が柔らかくなって、ようやく「完成(ゴール)」となります。

どちらが「楽」かは一目瞭然です。しかし、得られる「結果の確実性」と「劇的な変化」は、このダウンタイムの重さと比例するとも言えます。

 

比較項目 医療ダイエット(GLP-1) 医療ダイエット(注射・冷却) 脂肪吸引
ダウンタイムの有無 ほぼ無し(副作用は別) 有り(軽度) 有り(重度・必須)
主な症状 吐き気、胃部不快感(個人差) 腫れ、内出血、鈍痛 激しい痛み、広範囲の内出血、腫れ、むくみ、拘縮
仕事(デスクワーク) ほぼ影響なし ほぼ影響なし 最低3日〜1週間は休むことを強く推奨
圧迫着の必要性 なし なし 必須(数週間〜数ヶ月間)
体への負担 小(内科的) 小(局所的) 大(外科的・侵襲的)

関連記事はこちら:本気で痩せたいあなたへ「医療ダイエット」とは?種類・効果・費用を徹底解説

5. 費用と効果の持続性で比較

「結局、いくらかかるのか?」そして「その効果はいつまで続くのか?」
これは、治療を選択する上で、ダウンタイムと並んで重要な判断材料です。

【費用の比較】

  • 医療ダイエット:「継続」が必要な治療が多いため、月額課金型(サブスクリプション)や、回数券型になることが多いのが特徴です。
    ・GLP-1注射/内服薬: 月額数万円〜十数万円(使用する薬剤や量による)。目標体重になるまで(例:半年間)継続すると、総額は数十万円になります。
    ・脂肪溶解注射: 1回(1エリア)数万円 × 必要な回数(例:5〜10回)。総額は数十万円になることも。
    ・冷却痩身: 1エリア(1回)数万円〜十数万円。
  • 脂肪吸引:「1回の手術」で完結するため(基本的には)、初期費用(一括)が高額になります。
    ・部位によって価格は大きく異なり、1部位あたり数十万円が相場です。(例:あご下20〜40万円、二の腕30〜50万円、お腹全体80〜120万円など)
    ・これに加えて、麻酔代や圧迫着代などが別途かかることが多いです。

【効果の持続性(リバウンド)の比較】

  • 医療ダイエット:これは、本人の努力次第という側面が非常に強いです。
    ・GLP-1で痩せても、それは薬の力で「食欲が抑えられていた」結果です。薬をやめた途端に食生活が元に戻れば、当然リバウンドします。医療ダイエットは、あくまで「痩せやすい期間」を提供するサポートであり、その間に食生活や運動習慣を改善できなければ、効果の持続は難しいです。
    ・脂肪溶解注射や冷却痩身は、破壊した細胞は戻りませんが、効果が穏やかなため、残った他の脂肪細胞が(不摂生で)肥大すれば、結局は元の体型に戻ってしまいます。
  • 脂肪吸引:効果は「半永久的」と言われます。
    ・脂肪細胞の「数」そのものを減らしているため、その部位は圧倒的に太りにくくなります。これが最大の強みです。
    ・ただし、「何をしても太らない」わけではありません。残された脂肪細胞が肥大したり、内臓脂肪が増えたりすれば、当然ながら体型は変化します。しかし、「吸引した部位だけは、昔のようには太らない」という安心感は、リバウンドを繰り返してきた人にとって非常に大きいものです。

私は、この2つの費用と持続性の関係を、よく「サブスクリプション・サービス」と「資産購入」に例えて説明します。
医療ダイエットは、月額料金でダイエット中の「便利なサポート機能(食欲抑制など)」を利用する「サブスク」です。利用中は快適ですが、解約すれば機能は失われます。

脂肪吸引は、高額な初期費用を払って「太りにくい特定のボディライン」という「資産」を一括で購入するようなものです。一度手に入れれば、その資産価値(ライン)は半永久的にあなたのものになります(もちろん、維持管理=暴飲暴食しない、は必要ですが)。

 

比較項目 医療ダイエット 脂肪吸引
費用の発生 継続的(月額、回数ごと) 一括(初回手術時)
費用の目安 月額数万円〜 / 1回数万円〜 1部位 数十万円〜
総額 目標達成までの期間や回数による(変動しやすい) ほぼ固定(術式による)
効果の持続性 リバウンドの可能性あり(自己管理が必須) リバウンドしにくい(半永久的)
例えるなら サポート機能の「サブスクリプション」 ボディラインという「資産購入」

6. 皮膚のたるみへのアプローチ

痩身治療において、脂肪の量と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「皮膚のたるみ」の問題です。風船が、中身の空気(脂肪)が抜けるとシワシワになるのと同じで、痩せれば皮膚は余ります。この「皮余り」に、両者はどうアプローチするのでしょうか。

医療ダイエット(特に急激な減量)
GLP-1などで、もし短期間(例:3ヶ月)で10kg以上の大幅な体重減少を達成した場合、脂肪の減少スピードに皮膚の収縮が追いつかず、皮膚がたるんでしまうリスクがあります。特に、お腹、二の腕、太ももなどは「皮が余った」状態になりやすいです。
これは、自己流の急激なダイエットで起こる問題と全く同じです。医療ダイエットでたるみを防ぐには、理想的には「ゆっくり痩せる」ことを心がけ、並行して筋トレや、ハイフ(HIFU)、高周波(サーマクールなど)といった「引き締め治療」を別途行う必要があります。

脂肪吸引
脂肪吸引も、中身(脂肪)だけを抜くため、元々皮膚にたるみがある方(出産を経験された方、加齢によるたるみがある方)が受けると、たるみが悪化する(または、たるみが目立つようになる)リスクがあります。
しかし、現代の脂肪吸引は、この「たるみ」問題に対しても進化しています。「ただ取る」だけではありません。多くのクリニックでは、たるみ対策を同時に、あるいは標準装備で行っています。

  • ベイザー(VASER)脂肪吸引:超音波の熱で脂肪を乳化させ、組織へのダメージを抑えつつ、その熱がコラーゲンを収縮させ、皮膚の「スキンタイトニング(引き締め)」効果も狙う方法。脂肪吸引の主流となりつつあります。
  • J-Plasma(Renuvion)などの併用:脂肪吸引後、同じ穴からプラズマエネルギーを照射する機器を挿入し、皮膚の裏側(真皮層)から直接、強力に引き締める治療。たるみが強い方へのオプションとして用意されていることが多いです。
  • 医師の吸引技術:最も重要なのがこれです。あえて皮膚直下の「浅い層(皮層)」の脂肪を薄く残し、皮膚の重みを支える「柱」にしたり、皮膚の収縮を促すように刺激したりする、高度な技術です。

たるみへのアプローチという点では、脂肪吸引の方が「攻め(引き締め)」と「守り(残す技術)」の両方で、選択肢が多いと言えます。医療ダイエットは、たるませないように「ゆっくり痩せる」という「守り」か、別途「引き締め治療」を追加するしかありません。

 

項目 医療ダイエット(急激な減量) 脂肪吸引
たるみへの影響 たるみが発生・悪化するリスクあり たるみが悪化するリスクあり(特に技術や機器が古い場合)
たるみへの対策 ・ゆっくり痩せる(自己管理)
・(別途)ハイフや高周波治療を追加
・筋トレ
ベイザー等の引き締め機器の併用
J-Plasma等の強力な引き締め治療の追加
医師の高度な吸引技術(浅層脂肪の温存)
適応 たるみが少ない、皮膚の弾力が高い人向き 元々たるみがある人、出産後の人にも(引き締め併用で)対応可能

参考ページ:脂肪冷却(クールスカルプティング等)で狙った部分の脂肪を減らす

7. 医療ダイエット後に脂肪吸引を検討するケース

ここまで読んで、「医療ダイエット」と「脂肪吸引」は、全く別のものとして、どちらか一方を選ばなければならない、と感じたかもしれません。しかし、美容医療の現場では、この2つを「組み合わせる」ことで、最高の満足度を得ているケースが非常に増えています。

特に多いのが、「医療ダイエット → 脂肪吸引」という順番で治療を進める、合理的かつ安全なアプローチです。

なぜ、これが「王道パターン」なのか?

肥満度が高い方(例えば、BMIが25や30を超えている方)は、そもそも脂肪吸引の「適応外」となることが多いのです。理由は、以下の2点です。

  1. 安全性の問題:肥満度が高いと、全身麻酔のリスク(呼吸管理、心臓への負担)や、術後の血栓症(エコノミークラス症候群)のリスクが跳ね上がります。安全を第一に考える医師は、この状態での手術を断ります。
  2. 仕上がりの問題:肥満度が高い方は、お腹周りなどに「皮下脂肪」だけでなく「内臓脂肪」も大量に蓄積しています。脂肪吸引で取れるのは「皮下脂肪」だけです。内臓脂肪は取れません。そのため、パンパンに張った内臓脂肪を残したまま皮下脂肪だけを吸引しても、綺麗なくびれは出ず、満足のいく結果にならないのです。

そこで、この「2段階アプローチ」が非常に有効になります。

Step 1: 医療ダイエット(主にGLP-1や食事指導)

まずは、安全に手術を受けられる「土台」を作るため、医療ダイエットで全身の体重と内臓脂肪をしっかり落とします。BMIを標準値(25以下)に近づけることが目標です。

Step 2: 脂肪吸引(ボディライン形成)

全身の「土台」が整った上で、ダイエットではどうしても落ちきらなかった「最後の仕上げ」としての頑固な皮下脂肪(例:二の腕、腰回り、下腹部)を、脂肪吸引でデザインしながら除去します。この段階では内臓脂肪も減っているため、劇的に美しいボディラインを作ることが可能になります。

私が多くの医師に取材した中で、最も「患者さんのことを考えている」と感じたのは、まさにこのアプローチを推奨する医師たちでした。最初から「全部脂肪吸引で!」と高額な手術を勧めるのではなく、まずは患者さんの健康状態を改善(減量)させることを優先し、その上で本当に必要な部分だけを外科的に整える。

これは、時間も手間もかかりますが、患者さんの満足度も安全性も最も高い、非常に賢明な選択肢だと断言できます。

参考:脂肪溶解注射(BNLS、カベリン等)の効果とリアル|顔痩せ・部分痩せ

8. 両者のメリット・デメリット

ここまでの内容を、読者の皆さんがご自身の状況と照らし合わせやすいよう、メリットとデメリットの観点から、包括的に整理します。どちらか一方が「良い」「悪い」ではなく、あなたの「何を優先するか」で、メリットとデメリットの重みが変わってきます。

【医療ダイエットのメリット】

  • 体への負担が少ない(非侵襲〜低侵襲)。
  • ダウンタイムがほぼないか、非常に短く、日常生活への影響が少ない。
  • 全身の体重減少が(特にGLP-1などで)期待できる。
  • 内臓脂肪にも(間接的に食事改善を通じて)アプローチできる。
  • 外科手術への抵抗がある人でも始めやすい。
  • 費用が比較的安価から(月額、1回ごと)始められる。

【医療ダイエットのデメリット】

  • リバウンドのリスクが常にある(特にGLP-1は、やめた後の自己管理がすべて)。
  • 効果が穏やか、または確実性に欠ける(脂肪溶解注射など)。
  • 確実な部分痩せ(デザイン)は難しい。
  • 継続的な費用がかかり、総額が不明瞭になりがち。
  • 急激に痩せると皮膚がたるむリスクがある。

【脂肪吸引のメリット】

  • 確実な部分痩せ(ボディデザイン)が可能。
  • リバウンドしにくい(脂肪細胞の数自体を減らすため、半永久的)。
  • 一度の手術で、劇的なライン変化(メリハリ)が期待できる。
  • 医師の技術次第で、理想のプロポーションを追求できる。
  • ベイザーやJ-Plasmaなど、皮膚の引き締め治療と同時に行える。

【脂肪吸引のデメリット】

  • 重いダウンタイム(痛み、腫れ、広範囲の内出血、拘縮)が必須。
  • 高額な初期費用がかかる。
  • 外科手術であるため、麻酔リスク、感染リスク、血栓症リスクなどがゼロではない。
  • 医師の技術力や美的センスに、結果が100%左右される(=医師選びが極めて重要)。
  • 元々たるみがある場合、悪化するリスクがある(対策可能だが)。
  • 体重はあまり減らない。内臓脂肪は減らせない。

この両者を天秤にかけることになります。

 

項目 医療ダイエット 脂肪吸引
即効性 △(穏やか、または徐々に) ◎(ダウンタイム後に劇的変化)
確実性 △(自己管理・体質による) ◎(細胞を除去するため確実)
持続性(リバウンド) ×(リバウンドしやすい) ◎(リバウンドしにくい)
ダウンタイム ◎(ほぼ無い〜軽度) ×(重度・必須)
費用 ○(低額から始められるが、継続コスト) △(初期費用が高額)
体重減少 ◎(得意分野) ×(苦手分野)
部分痩せ(デザイン) △(苦手分野) ◎(得意分野)

9. あなたの理想とライフスタイルに合った選択

さて、ここまでの情報をもとに、いよいよ「あなた」にとって、どちらが最適な選択肢なのかを考えていきましょう。これは、医学的な正解というよりも、あなたの「価値観」と「ライフスタイル」のマッチングです。

【医療ダイエットが適している人】

以下に当てはまる方は、まずは医療ダイエットから検討するのが賢明です。

  • 「まず体重を落としたい」(BMIが標準より高い、健康診断で注意された)
  • 「外科手術や麻酔、ダウンタイムは絶対に嫌だ」
  • 「二の腕『も』お腹『も』太もも『も』、全体的に痩せたい」
  • 「月数万円のコストで、無理なく安全にダイエットをサポートしてほしい」
  • 「意思が弱く、食欲のコントロールが自己流ではどうしてもできない」
  • 「仕事が休めず、まとまったダウンタイムが取れない」

【脂肪吸引が適している人】

以下に当てはまる方は、脂肪吸引があなたの悩みを根本から解決してくれる可能性があります。

  • 「体重は標準だが、特定の部位だけ(二の腕、下腹部など)が、どうしても落ちない」
  • 「ダイエットで痩せたが、メリハリがなく、ラインが綺麗じゃない
  • 「出産後のお腹のたるみと脂肪を、一度でどうにかしたい」(※タミータック併用も視野)
  • 「リバウンドを繰り返すのはもう嫌だ。半永久的な効果が欲しい」
  • 重いダウンタイムを受け入れてでも、確実な結果が一度で欲しい」
  • 「最低1週間は、仕事を休んだりリモートにしたり、まとまった休みが取れる

ライフスタイルの観点から言えば、脂肪吸引は「イベント」です。手術の日(Dデー)に向けて休暇を調整し、術後は圧迫着と共に「引きこもり期間」を過ごす、という明確なプランニングが求められます。
一方、医療ダイエットは「日常」です。日々の生活の中に「注射」や「通院」を組み込み、食生活という日常そのものを変革していくプロセスです。

あなたは「非日常のイベント」で一気に変えたいですか? それとも「日常のプロセス」として着実に変えたいですか?
この問いへの答えが、あなたの選択を導いてくれるはずです。

10. 医師と相談して最適な方法を見つける

ここまで、ご自身で判断するための材料を数多く提示してきました。しかし、最後に最も重要なことをお伝えします。それは、「最終的な診断と判断は、必ず専門の医師に委ねるべき」ということです。

なぜなら、あなたが鏡の前で「この脂肪、憎い!」と思っているものが、本当に脂肪吸引で取れる「皮下脂肪」なのか、あるいはダイエットでしか落とせない「内臓脂肪」なのか、はたまた「筋肉」や「骨格」の問題なのか、素人目には正確に判断できないからです。

また、あなたの皮膚のたるみ具合が、脂肪吸引単体で耐えられるのか、引き締め治療が必須なのか、あるいは医療ダイエットでゆっくり痩せるべきなのかも、プロの触診と診断がなければ分かりません。

私がこれまで多くの「良いクリニック」を見てきた中で、信頼できる医師(クリニック)を見極めるための、一つの重要なポイントがあります。

それは、「医療ダイエット(内科的アプローチ)」と「脂肪吸引(外科的アプローチ)」の両方の選択肢を、一つのクリニックで持っていることです。

脂肪吸引しか行っていないクリニックは、体重が重い患者さんに対しても「無理やり」脂肪吸引を勧めるかもしれません。逆に、医療ダイエットしか行っていないクリニックは、本当は脂肪吸引が適応の「部分痩せ」の悩みに対しても、効果の薄い注射を勧めるかもしれません。

両方の選択肢を持っている医師であれば、あなたの状態をフラットに診断し、
「あなたの場合、まずは医療ダイエットで体重を落としましょう。その後に、残った部分を吸引するのがベストです」
「あなたの悩みは体重ではなくラインなので、医療ダイエットは不要です。二の腕だけ、脂肪吸引しましょう」
と、患者にとって本当に最適な、偏りのない提案をしてくれる可能性が高いのです。

カウンセリングは「契約の場」ではなく「診断の場」です。複数のクリニックで話を聞き、ご自身の悩みと、この記事で得た知識をぶつけ、最も納得のいく説明をしてくれる医師を見つけること。それこそが、後悔しないための、最も確実な成功ルートです。

 

あなたの「痩せたい」は、体重ですか? ラインですか?

「医療ダイエット」と「脂肪吸引」。この2つの違いを、私たちはその目的、プロセス、リスク、費用の面から詳しく比較してきました。もはや、この2つが全くの別物であることが、お分かりいただけたかと思います。

医療ダイエットは、あなたの「ダイエット(体重減少)」という長いマラソンを、医学の力でサポートしてくれる「トレーナー」です。ゴール(リバウンドしない体)テープを切るには、結局あなたの「自己管理」が不可欠です。

脂肪吸引は、あなたの「ボディライン」を、医師の技術で創り変える「外科手術」です。重いダウンタイムという対価と引き換えに、リバウンドしにくい「結果(ライン)」を一度で手に入れることができます。

どちらが優れているか、ではありません。あなたの「悩み」と「ライフスタイル」に、どちらが適しているか、です。

この問いに答えるために、あなたが今日から取るべき具体的なアクションは2つです。

  1. 体重計と鏡の前に立ち、ご自身の悩みが「体重(数字)」なのか「特定の部位(形)」なのかを、もう一度ご自身で明確にしてみてください。
  2. 信頼できる(できれば両方の選択肢を持つ)クリニックのカウンセリングを予約し、プロの目で「私のこの脂肪は、どちらのアプローチが最適ですか?」と、率直に診断してもらうことです。

あなたのその悩みに、医学的なアプローチで、安全かつ確実に別れを告げる。そのための正しい第一歩を、この記事が後押しできれば幸いです。

参考:脂肪溶解注射(BNLS、カベリン等)の効果とリアル|顔痩せ・部分痩せ

美容医療は 「自己肯定感を高めるための選択肢のひとつ」 という信念の もと、一人ひとりの美しさと真摯に向き合う診療スタイルを貫いています。現在は、アジアの美容外科医との技術交流や教育にも力を入れ、国際的なネットワークづくりにも取り組んでいます。

  • <所属学会>

  • 日本美容外科学会JSAS

  • 日本美容外科学会JSASPS

  • 日本形成外科学会

  • 乳房オンコプラスティック

  • <資格>

  • 日本外科学会専門医

  • コンデンスリッチファット療法認定医

  • Total Definer by Alfredo Hoyos 認定医

  • VASER Lipo 認定医

  • RIBXCAR 認定医

【監修医師】

Casa de GRACIA GINZA / GRACIA Clinic 理事長 美容外科医・医学博士 樋口 隆男 Takao Higuchi

18年間にわたり呼吸器外科医として臨床に携わり、 オーストラリアの肺移植チームでの勤務経験も持つ。外科医としての豊富な経験を土台に、10年前に美容外科へ転向。現在は東京・銀座と福岡に美容クリニックを展開し、これまでに10,000例以上の脂肪吸引、4,000例を超える豊胸手術を手がけている。特にベイザー脂肪吸引、ハイブリッド豊胸、脂肪注入豊尻、肋骨リモデリング(RIBXCAR)、タミータック、乳房吊り上げなどのボディデザインを得意とし、自然で美しいシルエットづくりに国内外から定評がある。

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