COLUMN医師監修コラム
医療ダイエットの失敗とリスク|安全に痩せるために知っておくべきこと
2025.12.24
「運動や食事制限なしで、楽に痩せられる」——。そんな魅力的なキャッチコピーと共に、医療ダイエットは今、非常に身近な選択肢となりました。美容クリニックだけでなく、内科などで「メディカルダイエット外来」を見かけることも増えています。たしかに、医師の管理下で科学的根拠に基づいたアプローチ(GLP-1受容体作動薬や脂肪溶解注射、脂肪冷却など)を行うことは、自己流のダイエットよりも効率的かつ安全である側面があります。
しかし、忘れてはならないのは、これらが「医療行為」であるという厳然たる事実です。医療行為である以上、そこには必ず「リスク」や「副作用」が伴います。私自身、Webマーケティングの立場で多くのクリニックのプロモーションに関わってきましたが、その裏側で、手軽さだけを信じて安易に施術を受け、思わぬ失敗や健康被害に苦しむケースも見てきました。
これから、医療ダイエットに潜む具体的なリスクと、失敗を回避するためにあなたが本当に知っておくべきこと、そして安全なクリニック選びの本質について、専門的な知見と具体的な事例を交えながら、詳しく解説していきます。
目次
1. 医療ダイエットに潜むリスク
医療ダイエットの魅力は、「医学の力で、自力では難しい部分痩せや体重減少をサポートする」点にあります。しかし、その「医学の力」は、体に何らかの作用を及ぼすことの裏返しでもあります。リスクはゼロではありません。
医療ダイエットのリスクは、大きく以下の3つに分類できると私は考えています。
- 薬剤・施術そのものに起因するリスク(副作用)
どんなに正しく使用しても、体質によって一定の確率で発生する副作用です。GLP-1の吐き気や、脂肪溶解注射の腫れなどがこれにあたります。 - 施術者の技術や診断に起因するリスク(人為的ミス)
医師の診断ミス、技術不足、不適切な機器の操作によって引き起こされる失敗です。脂肪冷却による凍傷や、注射によるしこりなどが含まれます。 - 患者自身の行動に起因するリスク(無知・誤用)
これが最も危険です。医師の診断を受けずに、海外から薬剤を「個人輸入」して使用するなど、医療管理下から外れた行動によって起こる深刻な健康被害です。
これらのリスクを「自分には起こらないだろう」と軽視してしまうことが、失敗への第一歩となります。まずは、どのようなリスクが存在するのかを具体的に知ることが重要です。
| リスクの分類 | 具体例 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 1. 薬剤・施術固有のリスク | GLP-1の吐き気・下痢、注射部位の内出血、脂肪冷却後の赤み | 薬剤の薬理作用、体質とのミスマッチ、正常な炎症反応 |
| 2. 人為的・技術的リスク | 注射によるしこり、脂肪冷却による凍傷・色素沈着、不適切な処方 | 医師の診断ミス、技術不足、知識不足、カウンセリング不足 |
| 3. 患者自身の行動リスク | 個人輸入薬による重篤な副作用、過剰摂取、持病の隠蔽 | コスト削減意識、知識不足、医師の管理下からの逸脱 |
関連記事:GLP-1ダイエット(サクセンダ・オゼンピック)の効果・副作用・費用
2. GLP-1の不適切な使用による副作用
GLP-1受容体作動薬(サクセンダ、オゼンピック、リベルサスなど)は、医療ダイエットの主役とも言える薬剤です。本来は2型糖尿病の治療薬ですが、脳の視床下部に作用して食欲を抑制し、胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を持続させる効果があるため、肥満治療(自由診療)に応用されています。
適切に使用すれば非常に有効な薬剤ですが、「不適切な使用」による副作用や失敗の報告が後を絶ちません。
一般的な副作用(比較的軽度)
これらは使用初期に多く見られますが、徐々に慣れていくことが多いです。
- 消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢、便秘、胃の不快感。これらは最も頻度が高い副作用です。
重篤な副作用(不適切な使用でリスク増大)
これらは稀ですが、命に関わる可能性があり、特に医師の管理外での使用は危険です。
- 低血糖:本来、GLP-1は血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促すため、単体では低血糖を起こしにくいとされています。しかし、元々糖尿病ではない人が過剰な食事制限と併用したり、不適切な量を投与したりすると、めまい、冷や汗、動悸などの低血糖症状を引き起こすリスクがあります。
- 急性膵炎:稀ですが、激しい腹痛や背中の痛みを伴う急性膵炎の報告があります。発症した場合は直ちに投与を中止し、入院加療が必要です。
- 甲状腺髄様がん:動物実験(ラット)で甲状腺髄様がんの発生が報告されています。ヒトでの関連性は確立されていませんが、甲状腺髄様がんの既往歴や家族歴がある人は禁忌とされています。
「不適切な使用」とは、具体的には「医師の診断なく、痩せたいという理由だけで使用する」「適応体重(例:BMI 27以上など)ではないのに使用する」「効果を高めたい一心で、自己判断で投与量を増やす」といった行為です。これらは、医療ダイエットの失敗の中でも、最も回避すべき危険な行為です。
| 副作用のレベル | 具体的な症状 | 注意点・リスクが高まる状況 |
|---|---|---|
| 一般的(軽度〜中等度) | 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲不振 | 使用初期に多い。多くは時間と共に軽減するが、我慢できない場合は医師に相談。 |
| 重篤(稀だが危険) | 低血糖(めまい、冷や汗、意識障害) | 不適切な(過剰な)投与、食事を全く摂らない、他の糖尿病薬との併用。 |
| 重篤(稀だが危険) | 急性膵炎(激しい腹痛、背中の痛み) | アルコール多飲者や、元々膵臓にリスクがある場合。個人輸入での使用。 |
| 潜在的リスク | 甲状腺髄様がん | 動物実験での報告。家族歴などを医師に申告していない場合にリスクを見逃す。 |

3. 脂肪溶解注射によるしこりや内出血
脂肪溶解注射(カベリン、BNLS、チンセラプラスなど)は、薬剤(デオキシコール酸など)を皮下脂肪に直接注入し、脂肪細胞の膜を破壊・溶解させ、体外へ排出させる施術です。狙った部分の脂肪を減らす「部分痩せ」として、特に顔(二重あご)や二の腕、お腹周りに人気があります。
手軽に見える注射ですが、これもリスクや失敗例が存在します。
- 一般的な反応(高確率で発生):
薬剤が脂肪細胞を破壊する過程で、必ず「炎症反応」が起こります。そのため、腫れ、赤み、熱感、痛みは、ほぼ必発の副作用です。また、針を刺すため、血管に当たれば内出血(あざ)が起こります。これらは通常、1〜2週間程度で自然に消失します。 - しこり(硬結):
これが失敗と感じやすい代表例です。薬剤の注入量が多すぎたり、注入の深さが均一でなかったりすると、炎症が強く起こりすぎた部分や、溶解した脂肪がうまく排出されずに線維化(硬くなる)し、「しこり」として残ってしまうことがあります。触ると硬く、時には痛みを伴うこともあります。 - 皮膚の凸凹(おうとつ):
しこりと同様に、薬剤が均一に注入されなかった場合、脂肪が減る部分と減らない部分がまだらになり、皮膚の表面が凸凹になってしまうリスクがあります。これは明らかに施術者の技術不足が原因です。 - 皮膚壊死(非常に稀):
薬剤を誤って非常に浅い層(皮膚直下)に注入した場合、皮膚の組織が壊死してしまう可能性があります。これは最も深刻な合併症の一つです。
脂肪溶解注射の失敗は、その多くが「施術者の技術と経験」に左右されます。脂肪層の厚さを正確に診断し、適切な薬剤を、適切な深さに、均一に注入する技術が求められるのです。
| リスク・副作用 | 症状 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 高頻度(正常な反応) | 腫れ、赤み、熱感、痛み、内出血 | 薬剤による正常な炎症反応、注射針による血管の損傷。 |
| しこり(硬結) | 注入部位が硬くなる、触ると塊がある。 | 過剰な炎症反応、線維化、注入量のムラ。(技術不足) |
| 凸凹(おうとつ) | 皮膚の表面が滑らかでなく、凸凹になる。 | 注入の深さや量が不均一。(技術不足) |
| 皮膚壊死(非常に稀) | 皮膚の色が変わり、組織が死んでしまう。 | 薬剤を浅すぎる層(皮膚層)に注入。(重大な技術ミス) |
4. 脂肪冷却による凍傷や色素沈着
脂肪冷却(クールスカルプティング®など)は、専用の機器を使い、皮膚や他の組織にダメージを与えない温度(約4℃)で脂肪細胞だけを凍結させ、アポトーシス(細胞の自然死)を誘導し、老廃物として体外に排出させる治療です。「切らない脂肪吸引」とも呼ばれ、医療ダイエットの中でも人気の高い施術です。
「切らない」=「安全」と思われがちですが、脂肪冷却にも特有のリスクと失敗例があります。
- 凍傷:
最も注意すべきリスクです。脂肪細胞を凍らせるほどの低温を皮膚に当てるため、皮膚を保護するための専用のゲルパッドの装着が必須です。このゲルの塗りムラ、パッドの不適切な装着、あるいは機器の温度管理の不具合によって、皮膚が凍傷を起こしてしまう可能性があります。軽度なら赤みで済みますが、重度になると水ぶくれや潰瘍、色素沈着や傷跡が残る失敗につながります。 - 色素沈着:
凍傷に至らなくても、強い冷却刺激による炎症が原因で、施術部位に茶色っぽい色素沈着が残ることがあります。特にアジア人の肌質は色素沈着のリスクが比較的高いとされています。 - 一時的な痛み・感覚麻痺:
施術中や施術後に、冷却による痛み、引っ張られる感覚、ヒリヒリ感、かゆみが出ることがあります。また、施術後数週間、施術部位の感覚が麻痺したり、鈍くなったりすることがありますが、これらは通常、時間と共に改善します。 - 奇異性脂肪過形成(PAH):
これは非常に稀(報告によると0.005%〜0.039%程度)ですが、最も深刻な失敗例です。施術によって脂肪が減るどころか、逆にその部位の脂肪が硬く、明確に増大(過形成)してしまう現象です。理由は完全には解明されていません。PAHが発生した場合、自然に治ることはなく、治療には脂肪吸引や外科的切除が必要になります。
これらのリスクは、機器の正しい知識と、万が一のトラブル(凍傷の兆候など)に即座に対応できる、経験豊富な医療スタッフの管理下で行うことで、最小限に抑えることができます。
| リスク・副作用 | 症状 | 主な原因・対策 |
|---|---|---|
| 凍傷 | 皮膚の赤み、水ぶくれ、潰瘍、傷跡。 | 保護ゲルパッドの不備、機器の不具合、スタッフの監視不足。正規の講習を受けたスタッフによる施術が重要。 |
| 色素沈着 | 施術部位が茶色っぽくくすむ。 | 冷却による炎症、体質。万が一発生した場合は、美白外用薬やレーザー治療で対応。 |
| 奇異性脂肪過形成(PAH) | 施術部位の脂肪が逆に硬く増える。 | 原因不明の稀な副作用。発生した場合、外科的な修正(脂肪吸引など)が必要。 |
関連記事はこちら:本気で痩せたいあなたへ「医療ダイエット」とは?種類・効果・費用を徹底解説
5. 医師の診断なしに個人輸入する危険性
医療ダイエットに関するリスクの中で、私が最も警鐘を鳴らしたいのが、この「医師の診断なしの個人輸入」です。
「クリニックで処方されるGLP-1は高価だ」「海外の通販サイトなら安く買える」といった理由で、医師の診断や処方箋なしに、インターネットを通じて海外から薬剤を個人輸入する人がいます。これは、医療ダイエットの失敗というレベルではなく、「自殺行為」に等しいと断言します。
その危険性は計り知れません。
- 偽造薬・粗悪品の横行
個人輸入で届いた薬剤が、本物である保証はどこにもありません。箱やラベルだけを精巧に真似た「偽造薬」が非常に多く出回っています。中身がただの生理食塩水(効果がないだけ)ならまだマシで、不純物や、全く別の危険な成分が混入している可能性も否定できません。 - 品質管理(コールドチェーン)の欠如
GLP-1注射薬の多くは、厳格な温度管理(通常2〜8℃での冷蔵保存)が必要です。個人輸入の輸送過程で、この「コールドチェーン」が守られている保証はありません。高温にさらされて失活(効果を失う)したり、変質したりした薬剤を使用することになります。 - 適応の無視と禁忌の見逃し
あなたは本当にGLP-1の適応ですか?(BMIは?)。甲状腺がんの家族歴や、膵炎の既往はありませんか? 医師は、こうした持病や体質を問診し、血液検査などで適応があるかを判断した上で処方します。個人輸入では、この最も重要な安全フィルターが一切ありません。 - 深刻な副作用への非対応
もし個人輸入した薬剤で、重篤な副作用(急性膵炎や重度の低血糖発作)が起きたらどうしますか? どの医療機関も、個人輸入した薬剤による健康被害の責任は取れません。治療が遅れ、最悪の場合、命を落とすリスクがあります。
医療ダイエットは、「医師の管理下」で行うからこそ「医療」なのです。その管理を自ら放棄し、安さだけを求めて個人輸入に手を出すことは、絶対にやめてください。

6. 失敗しないためのクリニック選び
医療ダイエットの失敗やリスクを回避するために、患者側ができる最も重要かつ効果的な行動は、「安全管理意識の高い、誠実なクリニックを選ぶ」ことです。価格の安さやアクセスの良さだけで選んではいけません。
私自身、多くのクリニックを見てきた中で、信頼できるクリニックを見極めるポイントは以下にあると考えています。
- 専門性と実績
流行っているから始めた「にわか」なダイエット外来ではなく、肥満治療や婦人科形成、美容外科・皮膚科の分野で、長年の実績や専門医の資格を持つ医師が在籍しているか。 - 診断の徹底
安易に「痩せたい」という希望だけを聞くのではなく、必ず血液検査を行い、肝機能、腎機能、甲状腺機能、血糖値などをチェックし、医学的に薬剤使用や施術が可能かを診断してくれるか。BMIが基準に満たない人に、安易にGLP-1を処方するクリニックは論外です。 - リスク説明の透明性
(次項で詳述しますが)メリットだけでなく、副作用やリスク、失敗例、そして「あなたにはこの治療が向かない可能性」まで、きちんと時間をかけて説明してくれるか。 - アフターフォロー体制
「薬を処方して終わり」「施術して終わり」ではなく、定期的な診察や、万が一、副作用が出た場合に、24時間連絡が取れる、あるいは夜間や休日でも対応してくれる体制が整っているか。 - 料金体系の明確さ
提示された金額に、診察料、検査料、薬代、アフターケア代が全て含まれているか。後から追加料金が発生しないか、明確であること。
| チェック項目 | 信頼できるクリニック | 注意が必要なクリニック |
|---|---|---|
| 診断プロセス | 血液検査や詳細な問診が必須。医師が診断する。 | 問診票だけで、血液検査なしに即日処方する。 |
| リスク説明 | 副作用や失敗例、代替案まで具体的に説明する。 | 「安全」「簡単」など、メリットばかりを強調する。 |
| 適応の見極め | BMIや体質で不適応な場合は「できない」と断る。 | 痩せている人にも希望通りに処方・施術する。 |
| フォロー体制 | 定期的な診察があり、緊急連絡先も明確。 | 薬を渡したら終わり。副作用の相談窓口が曖昧。 |
| 薬剤の出所 | 国内の正規代理店から仕入れた薬剤を使用。 | 個人輸入した薬剤を安価で提供している。(違法) |
参考ページ:脂肪冷却(クールスカルプティング等)で狙った部分の脂肪を減らす
7. カウンセリングでのリスク説明の重要性
失敗しないためのクリニック選びにおいて、最も重要なプロセスが「カウンセリング」です。ここで、いかに誠実な対応をしてもらえるかが、そのクリニックの安全意識を測るリトマス試験紙となります。
多くのクリニックでは、医師の診察の前に、まずカウンセラー(医療資格を持たないスタッフ)が希望を聞き、施術の説明をすることがあります。それ自体は効率化のために悪くありませんが、以下の点に注意してください。
- 最終的な診断と説明は「医師」が行うか?
カウンセラーのセールストークだけで契約を迫り、医師は注射を打つだけ、といった流れ作業のクリニックは危険です。あなたの医学的な適応を判断できるのは医師だけです。 - リスクや副作用の説明に時間を割いているか?
[cite_start]私が優良だと感じるクリニックは、カウンセリング時間の半分近くを、メリットの説明ではなく、「考えられる全ての副作用」「失敗例」「もしそうなった場合の対処法」「ダウンタイムの具体的な経過」の説明に充てます。[cite: 428] 患者を不安にさせることを恐れず、事実を正確に伝える姿勢こそが誠実さの証です。 - 代替案や「やらない」選択肢を提示するか?
「あなたの体質やライフスタイルなら、GLP-1よりも漢方薬の方が良いかもしれません」「まずは食事指導と運動から始めましょう」といった、そのクリニックの売上にならないかもしれない選択肢や、「今はやるべきではない」という意見を提示してくれる医師は、真に患者のことを考えている可能性が高いです。
カウンセリングは、あなたが「施術を受けるかどうかを決める場」であると同時に、「そのクリニックを信頼できるかを見極める場」でもあります。少しでも違和感や不信感を覚えたら、その場で契約せず、一度持ち帰って冷静に考える勇気を持ってください。
参考:脂肪溶解注射(BNLS、カベリン等)の効果とリアル|顔痩せ・部分痩せ
8. 自分の体質や持病を正確に伝える
安全な医療ダイエットは、クリニック側の努力だけで成り立つものではありません。患者であるあなた自身にも、非常に重要な「責任」があります。それは、「自分の健康情報を、正確かつ正直に医師に伝える」ことです。
「これを言ったら、治療を断られるかもしれない」という自己判断で、持病や服用中の薬、アレルギー歴、妊娠の可能性などを隠すことは、失敗やリスクを自ら招き入れる、最も危険な行為です。
なぜ正確な申告が重要なのか?
- 禁忌(やってはいけない)の回避:
前述の通り、GLP-1には甲状腺髄様がんの既往や家族歴、膵炎の既往がある人は禁忌です。これを隠して使用すれば、命に関わります。 - 薬の相互作用の防止:
現在服用中の薬(特に他の糖尿病薬、精神科の薬、血液をサラサラにする薬など)がある場合、GLP-1や他の薬剤との組み合わせで、予期せぬ副作用(重度の低血糖など)が出る可能性があります。 - アレルギー反応の予防:
脂肪溶解注射の薬剤成分や、麻酔薬、消毒薬などにアレルギーがある場合、重度のアナフィラキシーショックを起こすリスクがあります。 - 妊娠・授乳中:
医療ダイエットで用いる薬剤や施術の多くは、胎児や乳児への安全性が確立されていません。妊娠中・授乳中は原則として全ての施術が禁忌です。
医師は、あなたが提供する情報を基に、安全な治療計画を立てます。その情報が不正確であれば、どんなに優れた医師でも、リスクを回避することはできません。あなたの健康を守るために、問診票には全ての情報を正直に記入してください。

9. 医療ダイエットの修正は可能か
万が一、医療ダイエットで失敗(期待した効果が出ない、あるいは健康被害)が起こった場合、その「修正」は可能なのでしょうか。
これは、失敗の内容によって大きく異なります。
- GLP-1による副作用(吐き気、下痢など):
薬剤の投与を中止するか、減量すれば、ほとんどの場合は可逆的(元に戻る)です。ただし、急性膵炎などを発症した場合は、専門的な入院治療が必要です。 - 脂肪溶解注射によるしこり・凸凹:
軽度のしこり(硬結)であれば、マッサージや、ステロイド(ケナコルト)注射で線維化をほぐすことにより、改善する可能性があります。しかし、改善しない場合や、凸凹がひどい場合は、外科的な修正(脂肪吸引や、逆に脂肪注入で凹みを埋める)が必要になることもあり、修正は困難な部類に入ります。 - 脂肪冷却による色素沈着:
時間の経過と共に薄くなることもありますが、修正にはレーザートーニングや美白外用薬(ハイドロキノンなど)を用いた、別途の(追加費用がかかる)治療が必要になります。 - 脂肪冷却による奇異性脂肪過形成(PAH):
これが最も修正が困難な失敗です。PAHは自然治癒せず、薬剤での治療もできません。唯一の治療法は、増大した脂肪組織を外科的に取り除く(脂肪吸引や切除術)ことです。これは非常に難易度の高い手術となり、費用も高額になります。
このように、「修正」は可能だとしても、多くの場合、最初の手術よりも遥かに大きな身体的・金銭的負担を伴います。だからこそ、「失敗しないこと(=予防)」が何よりも重要なのです。
| 失敗・副作用 | 修正・対処法 | 修正の難易度 |
|---|---|---|
| GLP-1の軽度副作用(吐き気など) | 投与の中止、減量、対症療法薬の服用。 | 低(ほとんどが可逆的) |
| 脂肪溶解注射のしこり・凸凹 | ステロイド注射、マッサージ。重度な場合は脂肪吸引や脂肪注入。 | 中〜高(外科的修正が必要な場合あり) |
| 脂肪冷却の色素沈着 | レーザー治療、美白外用薬、保湿。 | 中(時間はかかるが、治療法はある) |
| 脂肪冷却のPAH(奇異性脂肪過形成) | 脂肪吸引、または外科的切除術。 | 極めて高(外科手術が必須) |
10. 専門家の管理下で健康的に痩せる
医療ダイエットについて、ここまで多くのリスクや失敗例を解説してきましたが、それは決して「医療ダイエットは危険だ」と否定したいからではありません。専門家の適切な管理下で行われる医療ダイエットは、自力では超えられなかった壁を超えるための、非常に強力で有効な「ツール」であることは事実です。
失敗を招くのは、多くの場合、「ツールを魔法と勘違いすること」から始まります。「注射さえすれば、何を食べても痩せる」「寝ているだけで痩せられる」という考え方は間違いです。
真に成功する「医療ダイエット」とは、薬や施術を「補助輪」として使いつつ、生活習慣そのものを見直す、包括的なプログラムであるべきです。
理想的なプログラムは、以下のような要素を含んでいます。
- 徹底した医学的診断(入口):
血液検査、体組成計、医師による問診で、なぜあなたが太っているのか(食べ過ぎ、代謝の低下、ホルモンバランス、持病など)を診断します。 - 専門家による生活習慣指導:
医師だけでなく、管理栄養士による食事指導や、トレーナーによる運動指導がプログラムに含まれている。GLP-1で食欲が落ちている間に、「痩せる食習慣」そのものを身につけさせます。 - 適切な医療ツールの選択(補助):
診断結果に基づき、あなたに最適なツール(GLP-1、漢方薬、脂肪冷却など)を、必要最小限で、安全なプロトコルに則って使用します。 - 定期的なモニタリングとサポート(出口):
薬を処方しっぱなしにせず、定期的に体調や体重の変化をチェックし、副作用が出ていないかを確認します。そして、目標体重に達した後、薬を「いつ、どのようにやめるか(出口戦略)」までをしっかりサポートします。
医療ダイエットのゴールは、薬を使い続けることではなく、「薬や施術がなくても、健康的な体型を維持できる習慣を身につけること」です。そのプロセスを、医学的・栄養学的な専門家の管理下で安全に進めることこそが、医療ダイエットの本来の価値なのです。
医療ダイエットのリスクを理解し、安全な選択をするために
ここまで、医療ダイエットに潜む様々なリスクについて解説してきました。GLP-1の不適切な使用、脂肪溶解注射のしこり、脂肪冷却の凍傷やPAHといった失敗例は、いずれも「医療行為」であることの重みを忘れた時に起こりやすくなります。特に、安易な個人輸入は、健康を害する最も危険な行為であり、絶対に避けなければなりません。
医療ダイエットは、魔法ではありません。あくまで、あなたの努力を医学的にサポートする「ツール」です。そのツールを安全かつ効果的に使用するには、専門家による厳格な管理が不可欠です。
あなたが失敗せず、健康的に痩せるために「明日から」実践できる、具体的な行動は以下の2つです。
- クリニック選びの際、価格や手軽さではなく、「血液検査の実施」と「リスク説明の丁寧さ」を最優先
の判断基準にすること。 - カウンセリングでは、自身の既往歴、持病、アレルギー、服用中の薬の情報を、一切隠さず「正確に」医師に伝えること。
これらの「安全の基本」を守ることこそが、リスクを最小限に抑え、あなたの医療ダイエットを「失敗」ではなく「成功」に導く、最も確実な道となります。
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